理系っぽい本が読みたいけど、難しいからマンガで何かないかな?
という人には「ドミトリーともきんす」がおすすめです。
不思議で知的で大好きな作品です!
「ドミトリーともきんす」は2014年に発表された高野文子さんのマンガです。
中央公論新社から発行されています。
イーストプレスのWebメディア・マトグロッソで1話だけ無料で読めます。
私は理系科目ができず、
最後の物理のテストはたしか0点です。200点満点で。
そんな私でも「ドミトリーともきんす」はお気に入りの一冊です!
「ドミトリーともきんす」が好きすぎる!
さて、問題です。鏡はどうして左右反対になるのに、上下はさかさまにならないのでしょう?
どうして雪の結晶はあんなに美しい多角形になるのでしょう?
だれもが一度はふしぎに思ったことがあるんじゃないでしょうか。
「ドミトリーともきんす」は
すこし長めの絵本としても、
やさしい科学の本としても、
本棚に置いておきたい一冊です。
高野文子さん経歴
高野文子さんは1957年生まれの新潟県出身の漫画家です。
看護師としてつとめるかたわらデビューし、30年以上のキャリアで単行本7冊と、すくないながらも質の高い作品を発表しています。
あらすじ
「ドミトリーともきんす」のあらすじは、
物理学者の朝永振一郎、
中谷宇吉郎、
湯川秀樹、
植物学者の牧野富太郎
の4人の偉大な科学者たちがもし、学生のとき同じ寮に住むことになったらというお話です。
主人公は寮母のとも子さんです。小さい娘・きん子ちゃんを抱えています。
4人の科学者が好きすぎる!
なぜ、この4人の科学者でなければいけなかったのでしょうか?
それは、この4人が偉大な科学者であっただけではなく、詩的なセンスも持ち合わせていたからです。
「ともきんす」という名前は物理学者ジョージ・ガモフの「トムキンスの冒険」という本から拝借しています。
「トムキンスの冒険」は物理学者ガモフが書いた小説です。
「ともきんす」に住む4人も、一般人向けの本を書いたり、絵をたしなんだりして、豊かな視点もっています。
4人の若者
トモナガ君
トモナガ君はハンサムで背筋がピンとしていていかにも好男子といった姿です。
トモナガ君は鏡の中の世界についてやさしくおしえてくれます。
マキノ君
4人の中では牧野富太郎だけが植物学者です。
また、他の3人が1900年代生まれに対して、牧野は1862生まれなので、専門分野も世代も異なっています。
マキノ君は羽織袴、髪はザンギリ頭といったノスタルジックないでたちです。
顔はジャニーズ系でしょうか。口調もちょっと昔っぽくて、紙切り芸人のようです。扇子を片手に植物の美しさを語ってくれます。
ナカヤ君
ナカヤ君はベレー帽につぶらな瞳の童顔の若者です。雪が降ったら雪の結晶のことを、地震のしくみはこたつ布団を使って説明してくれます。
ユカワ君
ユカワ君は学ランにメガネでおとなしそうな感じです。話しかけると、京ことばで上品に数のふしぎについて教えてくれます。
いずれの学生さんも、賢いだけでなく、
ときには落ち込んだり、失敗したりするところが人間ぽくてとても魅力的です。
マキノ君以外の3人は40代ごろに戦争を経験していて、少し暗い影を感じます。
もし、幽霊としてこの世にとどまることになったら、おそらく4人ともこんな姿で出てくると思わせてくれます。
4人の科学者もジョージ・ガモフのように一般向けの随筆集をいくつか残しています。
「ドミトリーともきんす」は4人の随筆集にインスピレーションを受けてかかれています。
作中に出てくる湯川秀樹の随筆の中に、
”研究の苦しみをこえた先には案外、詩的なものが待ち受けている”
というような一説があります。
研究の中で新たな発見ができたのは、詩に親しんでいたからこそだと伺わせます。
仕事イッペントウではなく、ときには息抜きをする。
そういう人間くささが大好きです!
演劇的な演出が好きすぎる!
「ドミトリーともきんす」にでてくる演出として、
寮母のとも子さんがこちらに語りかけるようなシーンがところどころに挿入されています。
これは演劇的な演出です。
他にも演出的な視点でライティングやカメラワークなどを考えると、高野さんのセンスに驚かされます。
絵のタッチが好きすぎる!
絵のタッチは簡略化されていながらも洗練されていて、戦前の4コマや「タンタンの冒険」などを思わせます。
影や色はほぼ手書きの点描で表現されていて、トーンの使用はほとんどなく、カケアミの表現もありません。強弱があまりない線ですが、丸みをおびていて、あたたかみが感じられます。
高野さんは自然科学の本を読んだような「涼しい風」を表現したかったので、「気持ちを込めず」、「静かな絵」になるようにこころがけたそうです。
確かにこの本を読むと昔の手書きの図鑑を開いているような感覚におそわれます。
ひんやりして気持ちいい絵の中で、静かにやさしく語りかけてくれるマンガです。
まとめ
「ドミトリーともきんす」の魅力
1.詩的な感性を持った科学者たち
2.こちらに語りかけるような演劇的な演出
3.ヒンヤリして気持ちいい絵のタッチ
この本を開くと静謐な世界にいざなわれ、いつでも4人が待ってくれます。彼らと時をすごすと、ちょっと賢くなったように感じられます。
「ドミトリーともきんす」にはどのマンガにもないような魅力があります。ぜひ読んでみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
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