こんにちは。きたはちです。
5巻以内完結のマンガや短編集をよく読んでいます。
安野モヨコさんのマンガ「鼻下長紳士回顧録」には、心に刺さる名ゼリフがたくさんあるのでおすすめですよ。
2020年、第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞にも輝いています。
そこで、この記事では、「鼻下長紳士回顧録」のあらすじやみどころ、そして名ゼリフを3つ紹介していきます!
安野さんの美麗な絵も魅力なんですよね。
「鼻下長紳士回顧録」あらすじ
舞台は20世紀初め、フランス・パリの片隅にある売春宿メゾン・クローズ(閉じた家)「夜の卵」。そこで娼婦として働く、どこか冷めたところのあるコレットは、ある客からもらったノートに、変態ばかりの客「鼻下長紳士」たちとのエピソードを書き留めていた。そんな彼女にとっての唯一無二の存在は、ヒモ男のレオン。甘く巧みな言葉で女から金を巻き上げる彼の性分を知りつつも、コレットは関係を断ち切れないでいた。
文化庁メディア芸術祭HP「鼻下長紳士回顧録」紹介ページより引用
名前が象徴するように、「メゾン・クローズ」は一度娼婦として入ったら抜け出せない宿です。
集まる客は変態ばかり。
せっかくつらい思いをして働いても、飲み食いや衣装、装飾品にそれ以上使うので、働けば働くほど借金がかさむという底なし沼です。
主人公のコレットは現実逃避しながら変態オジサンたちの相手をします。
そして、騙されているとわかっていながらレオンとの関係をズルズルと続けます。
集まる客のオジサマたちはその変態さゆえに滑稽で、ある意味和まされます。
シリアスと滑稽さ、娼婦たちの美しさが絶妙なバランスで成り立っている物語ですね。
登場人物
コレット
メゾン・クローズの娼婦。田舎から出てきてすぐにレオンに出会ってしまったがために娼婦に身を落とす。
レオン
ヒモ。一目でわかる色男。甘い言葉をささやき、何人もの女から金を巻き上げる。
サカエ
作家志望の日本人。取材のためにパリに訪れているが、高級娼婦のナナに入れ込むようになる。
ナナ
優れた容姿と類まれな審美眼で高級娼婦へと昇り詰めた。
男から金をむしるだけむしりとって捨てる「地獄のような女」。
名言①この世の大抵のことはそういうプレイだって思えばしのげる
この世の大抵のことはそういうプレイだって思えばしのげる
鼻下長紳士回顧録 上 より引用
コレットのセリフです。
どんな変態プレイをされても、レオンからどんなひどい目にあわされても、そういう「プレイ」だと思えばしのげるということです。
「プレイ」はある意味「ごっこ遊び」や「冗談」であって、「本気じゃない」っていうことですよね。
コレットのストレス対処法は現実から目を背けること。
これって私たちにも言えませんか?
学校や会社が辛くてもやめられない。
休日はお酒や趣味で気を紛らわして、また普段の生活に戻ります。
あなたの生活もコレットとどこか似ているかもしれませんよね?
名言②私の選んだそういうプレイなのだ
金を渡しに行かないとレオンは帰ってしまうかもしれない
~中略~
でもそれはたぶん私の選んだそういうプレイなのだ
鼻下長紳士回顧録 上 より引用
金の無心に来たレオンを待たせながら、客の相手を続けるコレットのセリフです。
大事な人であるはずのレオンを外に待たせ、客をとるのは矛盾した行動に思えますよね?
一方で、お金を渡したくない気持ちもわかります。
コレットは、レオンをあえて待たせることで彼の気をひきたかったのでしょうか。
それとも、金をとられてばかりなので一矢報いたかったのでしょうか。
私はそのどちらでもないと思いますね。
幻想的なシーンの中で、コレットの複雑な感情が伝わってきます。
名言③本当のことを言ったらダメ
本当のことを言ったらダメ
鼻下長紳士回顧録 下 より引用
コレットの娼婦仲間、カルメンの言葉。
コレットと別の娼婦がケンカをしているときのセリフです。
カルメンは客も取れず、いつもぼーっとしています。
妄想の中の「あの人」をずっと待っていて、正気ではありません。
そんなカルメンが、コレットと娼婦たちの言い合いを聞いて、「本当のことを言ったらダメ」と言うのです。
本当のことを言うとどちらも傷つくだけという意味なんでしょうが、妄想癖のあるカルメンがそれを言うのがなんとも皮肉です。
現実に引き戻されることが禁句というのが、彼女たち自身のもろさを表しています。
私たちにも当てはまるようで、考えさせられてしまいますね。
個人的にラストが…
個人的にはラストがちょっと納得いかないんですよね。
人によってはきれいに終わったと感じるかもしれません。
女性と男性で、もしかしたら感じ方が違うかもしれませんね。
まとめ
「鼻下長紳士回顧録」は名言も魅力ですが、娼婦たちの体がエロティックに描かれているところもいいですね。
ただし、性欲をあおるようなものではなく、あくまで美しいエロティックさです。
肉感のある体も、骨ばった体もそれぞれ陶磁器のような美しさがあります。
巻頭のピンナップも鮮やかで本当に美しいですよ。
娼婦であるのに性欲とは無縁とも言いたげな姿は、やっぱり「働きマン」と同じく女性の自立や強さを表現してるんじゃないでしょうか。
娼婦の妖艶さを楽しみたい人、日常の中に何か変化がほしい人、どちらにもおすすめな作品です。
「鼻下長紳士回顧録」は全2巻完結、通常版と特装版は祥伝社から、電子書籍はコルクから発行されています。
ぜひ読んでみてくださいね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
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