1巻完結,短編集

『ルックバック』の本当にすごいところ(伏線、オマージュ)

どうもこんにちはきたはちです。

5巻以内完結や短編集など短いマンガをこよなく愛しています。

このブログでは主に短くてサクッと読める新刊マンガの感想をお伝えしています。どうぞよろしくお願いします。

藤本タツキさんの長編、『ルックバック』が9月3日に発売されました!

ジャンプ+で無料公開され、大好評だった本作。

公開中に修正が加えられたことも大きな話題となりました。

この記事では、長年マンガを読んできたぼくが『ルックバック』の本当にすごいところを6つまとめました。

ネタバレもちょっと含みますのでご了承ください。

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『ルックバック』ってどんなマンガ?

自分の才能に絶対の自信を持つ藤野と、引きこもりの京本。田舎町に住む2人の少女を引き合わせ、結びつけたのは漫画を描くことへのひたむきな思いだった。月日は流れても、背中を支えてくれたのはいつだって――。唯一無二の筆致で放つ青春長編読切。

『ルックバック』 Amazon詳細ページより

漫画家をめざして突き進む二人の少女の物語です。

二人の住む町のモデルとなったのは作者の藤本さんの出身地でもある山形県。

藤本さんの出身校である東北芸術工科大学も登場します。

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①2回の修正

「『チェンソーマン』藤本タツキの新作」

「140ページ超の長編」

公開当初から話題になった本作ですが、公開後に修正が行われたことでさらに注目をあつめることに。

殺人犯に幻聴の症状があるような描写が、統合失調症患者の方々への偏見につながるとの指摘を受けてのことでした。

修正後、ネットでは対応の早さをたたえる一方で、「原作の意図が損なわれた」という声も。

初公開版では、京都アニメーション事件を彷彿とさせるような内容でしたが、修正されたことで事件を想起するような内容ではなくなったと感じました。

単行本版ではさらに修正が加えられ、原作のテイストをのこしつつ、差しさわりのない内容になったと思います。

ネット公開を経て多くの意見をとりいれていくことが、今の時代のマンガらしいなと感じました。

②オマージュ

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』

このマンガを読んだときに最初に思ったことが、映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に似ているということでした。

『ワンス~』は、2019年に公開されたクエンティン・タランティーノ監督の映画。

1969年に実際に起きた女優シャロン・テートの殺害事件をモチーフにしています。しかし、映画の中では殺人事件は起こらず、主人公たちが殺人者たちを返り討ちにするといった内容です。

『ルックバック』では殺人事件は起こりますが、「もし、主人公の二人が出会わなかったら」という世界で殺人者を撃退するというストーリー。

2019年に実際に起きた京都アニメーションの事件をモデルにしていることや、最後のコマに『ワンス~』のDVDがうつりこんでいることからも、オマージュしていることは明らかです。

親友を助けた藤野が骨折して救急車で運ばれていくシーンも、『ワンス~』のワンシーンを彷彿とさせます。

Oasis『Don’t Look Back In Anger』

『ルックバック』というタイトルから、なんとなくこの名曲をおもいうかべた人も多いのではないでしょうか。

『ルックバック』が『Don’t~』をあきらかにオマージュしているとわかる箇所があります。

まずひとつは、最初のコマで黒板に『Don’t』と書いてあるところ。そして、最後のコマで『ワンス~』とともに映画『Look Back In Anger』のDVDもころがっているところです。

『Don’t~』がマンチェスターテロ事件のアンセムであることから、意図的にオマージュされていることがわかります。

③メッセージ性

これらのオマージュにこめられたメッセージは、作品をつくることの純真な心、そして、それを暴力で踏みにじることへの怒りです。

実際の事件を題材にすることで、より強力なメッセージとなっています。

藤本さんの姿勢が強くつたわります。

④書き文字がない

『ルックバック』には擬音をあらわす書き文字が全く登場しません。そのねらいは、現実味をもたせることにあると思います。

マンガの重要な要素、書き文字。逆に言えば、書き文字があるからこそマンガだとも言えます。

その書き文字をつかわないことによって、まるで実際に起きたことを切り取っているような効果をもたらすのです。

⑤感情表現

ぼくが『ルックバック』で好きなシーンが、雨の中で藤野が喜びをかみしめるシーン。

自分よりマンガがうまいと思っていた京本からほめられることによって藤野はいままでにない喜びを感じます。

しかし、ライバルでもある京本の前では喜ぶ姿は見せられません。そのかわり、帰り道に藤野はなんとも奇妙な表情で喜びをあらわします。

藤野がいとおしく感じられるシーンです。

そのほかにも、自分よりうまいマンガを目にして呆然とする藤野の絶妙な表情、純粋に藤野を尊敬する京本のキラキラした目、殺人事件のニュースを聞いて絶望する表情。

セリフでは多くを語らず、表情で感情をたくみに表現しています。

『チェンソーマン』の無機質な感じも衝撃でしたが、『ルックバック』のほうが個人的には好きです。

⑥セリフの少なさ

『ルックバック』を読み終わっておどろくのが、その短さです。

140ページ以上あるにもかかわらず、10分足らずのかなり短い時間で読み終わるはずです。

それなのに映画をみているような臨場感があり、濃密な時間を過ごした気分になります。

その理由は単純にセリフの少なさにあります。セリフが少ないから早く読み終わってしまうだけのこと。

極端なのはラストシーン。ラストの11ページはセリフが全くありません。

にもかかわらず1本の映画をみたようなほどよい疲れすら感じます。

セリフの少なさに対して、絵の情報量が多いからです。

『ルックバック』には主人公の藤野が読者に背を向けて机に向かうシーンが連続して登場します。

セリフのないこのシーンが、全く同じ構図で続き、背景や服装を変えることによって年月の移り変わりを表現しています。

また、本棚に次々とマンガの参考書が増えることによって、主人公の実力がどんどん伸びていくことがわかります。

書き文字やセリフがないのに絵の情報量が多いため、読んでいるというよりもページから音が聞こえるような感覚になります。

まとめ

というわけで今回は以上です。最後までよんでくださってありがとうございました。

「ルックバック」はショッキングでありながら、さまざまな仕掛けがされています。それらは全て、漫画家をはじめとするクリエイターの作品にかける純粋な思いを伝えるため。ぜひ手に取ってなんどでも読み返してみてください。

このブログではマンガにまつわる様々な情報を紹介していきます。

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