
どうもこんにちはきたはちです。
5巻以内完結や短編集など短いマンガをこよなく愛しています。
このブログでは主に短くてサクッと読める新刊マンガの感想をお伝えしています。どうぞよろしくお願いします。
山本和音さんの短編集『夏を知らない子供たち』が9月10日に発売されました!おめでとうございます!
この記事では、『夏を知らない子供たち』の感想、各作品の解説をしていきます!
『夏を知らない子供たち』ってどんなマンガ?
次々と失われていくものたち。それでも僕たちは生きていく。
『星明かりグラフィクス』『生き残った6人によると』の山本和音、初の作品集。
ポップな絵柄とセリフ回しの妙、内に秘めたテーマ性。
新しき才能、山本和音が描いてきた、ショートショートから中編までの作品群を収録。
【収録作品】
100ドルは安すぎる/恋と夜をかけろ/怪獣警報/太陽からの手紙
夏を知らない子供たち/まどか田園へ行く/銀河鉄道の女/コーディネートレンジャー
中学生はよく食べる/ナイトゲーム/雨は止んだか
『夏を知らない子供たち』 Amazon詳細ページより
山本和音さんの絵はまるっこくて曲線が多くて親しみやすいのが特徴です。そんなポップな絵柄と、宇宙感、未来感あふれる題材がよくマッチしています。
それでは、『夏を知らない子供たち』に収録されている作品を収録順に紹介していきたいと思います。『銀河鉄道の女』、『コーディネートレンジャー』、『雨は止んだか』はごく短い掌編なので今回ははぶきます。
太陽からの手紙
太陽の上をひたすら歩く仕事をする少女の物語です。少女はのこしてきた家族へ向けて手紙を送りますが…。
ポップな絵柄なので油断していましたが、毒のある終わり方にちょっとびっくりしてしまいます。
夏を知らない子供たち
地球の平均気温が52℃をこえた2150年。
人々は夏は「スノードーム」と呼ばれるシェルターで生活することが義務づけられていました。
しかし、中には脱走する人も。
茂木の仕事はそんなスノードームから逃げた人々を保護すること。新人の茂木は初仕事にはりきりますが…。
地球温暖化と、利便性によって熱意までなくしてしまった人々を皮肉をこめて描いた作品だと思います。
まどか、田園へ行く
まどかのスマホに着信があった相手は学生時代の別れた彼氏、成宮信二。
まどかは成宮にフラれた過去があり、それを今でもひきずっています。
今、成宮は金融庁につとめているエリートのはず。
まどかはこれを機にヨリを戻そうとかんがえますが…。
オチを知ってしまうと「なんだぁ」と思ってしまいますが、スッキリさわやかな気持ちで読める短編です。
100ドルは安すぎる
賞金稼ぎがあふれる街であらわれたのは、マイナス100ドルの賞金首。
捕まえると逆にお金を払うことになるので誰も手出ししません。
好奇心がビーティは推理屋のスナの元をたずね、マイナス100ドルの賞金首の謎を解こうとします。
カウボーイビバップみのある世界観がいいですね。ほぼ二人だけの会話劇なのもシブくてぼく好みです。
怪獣警報
東京、吉祥寺に法事につかうお供物のフルーツを買いにきた鉄平とみずきのきょうだい。
しかし、突然の怪獣警報が。二人に危険がせまる!
子供たちが大人に振り回されることへの皮肉。あと、地域によってリスクに差がある構図も、どこかコロナ禍の現代っぽさを感じてしまうのは考えすぎでしょうか?
中学生はよく食べる
デートをすっぽかされた彼氏の目の前にあらわれたのは、なぜか彼女の弟だった。
ギャルっぽい彼女にたいして弟は素直でマジメ。彼氏もそんな弟にわるい気はしないようです。
彼女の人となりは結局わからないものの、弟くんがいることによってうまく回っている感じがなんともほほえましい作品です。
ナイトゲーム
プロ野球のドラフト会議にも指名されるほどの実力の持ち主、光浦日菜太。
将来有望な彼に、幼なじみの西澤ゆりかから連絡が。
しかし、ゆりかは悪い彼氏と付き合っているようでした。
見ようによっては後味のわるい話ですが、山本さんのポップな絵柄で中和され、逆にさわやかささえ感じる物語です。
恋と夜をかけろ
学問よりも恋愛が重視されるようになった世界。学問をしていると刑罰が科されるほど。
束総太は体育倉庫にかくれて科学を学んでいた。ある日、総太が体育倉庫に向かうと夏目漱石の『坑夫』を読む少女が。
なんかもうエロマンガみたいな設定ですが、意外にダークな展開になっていきます。
あの巨匠のSFとの共通点とは?
山本和音さんの短編は藤子・F・不二雄さんに通じるものがあると思います。
藤子・F・不二雄さんの短編にはいつも風刺的な一面がありました。
人口増加、土地の減少、老後問題。藤子さんのSFにはその時代への警鐘がありました。
今回の山本和音さんの短編にも、ポップな絵柄ながら風刺的な一面があります。ブラック企業、分断する社会、コロナ禍。
かわいい絵柄で社会への警鐘をならす姿勢はまさに藤子不二雄スピリッツを継承するもの。わくわくさせるものがありつつ、ピリリときいているスパイスを感じます。
まとめ
というわけで今回は以上です。最後までよんでくださってありがとうございました。
『夏を知らない子供たち』はポップな絵柄でありながら、社会への風刺も忘れないSF短編集です。ぜひ読んでみてくださいね。
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