1巻完結,短編集

高野文子「黄色い本」は小説みたいなマンガ!?理由3つ

小説みたいにひたれるマンガが読みたい

という人には、高野文子さんの「黄色い本 ジャック・チボーという名の友人」をおすすめします。

「黄色い本」はマンガを読んでいるというよりも小説を読んでいるに近い感覚がします。

この記事はつぎのような内容です。

・「黄色い本」が小説みたいな理由3つ

・表題作「黄色い本」の魅力2つ

・「黄色い本」を購入する方法

「黄色い本」は高野文子さんのマンガ短編集です。

表題作の「黄色い本」のほか、「CLOUDY WEDNESDAY」、「マヨネーズ」、「二の二の六」の全4編が収録された154ページで構成されています。

2003年に第7回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した作品です。

高野文子さんは1957年生まれの新潟県出身の漫画家です。

看護師としてつとめるかたわらデビューし、30年以上のキャリアで単行本7冊と、

すくないながらも質の高い作品を発表しています。

高野文子さんの「ドミトリーともきんす」についてはこちらの記事をご覧ください。

「ドミトリーともきんす」が好きすぎる! - 高野文子
高野文子さんの「ドミトリーともきんす」はマンガという枠を超え、科学を手軽に楽しめる本として最適な一冊です。なにより僕が本当に好きな一冊!ぜひぜひ読んでください!

 

スポンサーリンク

「黄色い本」が小説みたいな理由3選

「黄色い本」全体について言えることを紹介しますね。

①空気感

②難解さ

③濃密に感じる時間

①空気感

「黄色い本」では一つ一つのシーンの空間とか空気感をとらえている感じがします。

マンガは絵の組み合わせですからやっぱり「構図」という考え方が出てきます。

背景や人物を配置するときは、どこに何を置いたらカッコよく、またはかわいく見えるか考えますよね。

もちろん、高野文子さんの絵は構図も優れているんですが、

そのシーンの気温とか湿度とか、取り巻く感情まで伝わってきます。

たとえば、雨粒があたる窓ガラスが落とす影とか、

愛想笑いしあってる会社の給湯室の雰囲気とか、

シーンを2次元じゃなくて3次元でとらえてるっていうんですかね。

小説の場合はそれを文章で表現しますが、「黄色い本」の場合は最小限のセリフと絵で表現しているような印象を受けます。

②難解さ

「黄色い本」は正直ちょっと難解なところもあります。

でもそこが魅力でもあるんですよね。

読者に手取り足取り教えてくれるよりも、ちょっと突き放されたほうが

「その世界に入っていきたい」「もっと理解したい」

と思いませんか?

③濃密に感じる時間

「黄色い本」は1コマに吹き出しが1こということがザラにあります。

「黄色い本」に限らず高野さんの作品にはそういうことが多いです。

登場人物がいて、セリフを1つ言う。その次のコマで別の登場人物がセリフを言う。

場合によってはおんなじ登場人物がおんなじ構図でセリフを言ってるのに

わざわざコマを分けていたりします。

丁寧に1コマ1コマ描いているので、

シーンのその瞬間の大事さが伝わってくるようです。

スポンサーリンク

表題作「黄色い本」の魅力2つ

ここからは表題作の「黄色い本」の紹介とその魅力について説明しますね。

「黄色い本」は劇中劇仕立てになっています。

全5章、72ページです。

1970年ごろ、就職を控えた女子学生の実地子「チボー家の人々」という小説を読みながら毎日を過ごすという物語です。

「黄色い本」の魅力を2つにまとめてみました。

①空想の世界と現実の世界が入り混じっている

②高野さんの自伝として読んだときのせつない終わり方

①空想の世界と現実の世界が入り混じっている

「黄色い本」は主人公の実地子が「チボー家の人々」の物語の中に入り込んでしまったり、

「チボー家~」の登場人物が現実に出てきて実地子に語りかけたり、

実地子の空想と現実の世界が入り混じって話が進んでいきます。

物語に影響されることってありませんか?

子どもだったら戦隊ものとか仮面ライダーとかプリキュアとかですかね。

変身ポーズや必殺技を真似たりして遊びますよね。

大人になってドラマに影響されて、

登場人物の振る舞いやファッションを真似する人だっています。

私たちの身の回りには物語がそこかしこにあるので、

私たちが生活する上で物語が欠かせないものになっています。

「黄色い本」の実地子もその一人で、小説「チボー家の人々」の物語に強烈にとらわれてしまっています。

「チボー家の人々」に影響される実地子がなんともいとおしくて共感してしまいます。

私たちは「黄色い本」という物語にとらわれてしまいますよ。

②高野さんの自伝として読んだときのせつない終わり方

「黄色い本」はなんともせつないあたたかい終わり方をします。

「黄色い本」は高野文子さんの自叙伝的な物語と言われています。

物語の舞台は雪深い北国ですが、高野さんの出身地は新潟です。

また、主人公の実地子の年は高野さんの5つ上ぐらいに設定されているそうです。

高野さんも実際に学生当時「チボー家の人々」を読んでいました。

そして、看護師として働いたのちにマンガ家としてデビューしています。

しかし、物語の中で実地子は看護師になるのかというとそうではなくて別の道を歩みます。

高野さんが実地子に込めた思いがなんとなく伝わってきて、しみじみと感じられるラストシーンになっています。

「黄色い本」を購入する方法

「黄色い本」は電子書籍版が出ていませんので、

ネット通販か書店でお買い求めください。

高野文子さんの作品は「ドミトリーともきんす」以外は電子書籍化されていないみたいです。

まとめ

「黄色い本」が小説みたいな理由と、

表題作の「黄色い本」についての魅力を主に紹介していきました。

機会があれば他の収録作品についてもちょっとだけ紹介しようかなと思います。

「黄色い本」の中にはほかにも、

冬野さほさんのマンガをカバーした実験的作品「CLOUDY WEDNESDAY」

大人の恋愛模様を独自の視点で描いた「マヨネーズ」「二の二の六」など、

名作ぞろいです。

ぜひ読んでみてください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。

紙の本はhontoでも探してみてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました