2020年7月30日、森泉岳土さんの「爪のようなもの・最後のフェリーその他の短篇」(以下、「爪のようなもの~」)が発売されました。
ミュージックアルバムのようなオシャレで多彩な漫画短編集になっています。
エロティックなところもあったりして大人が楽しい漫画ですね。
気になる中身や魅力について紹介していきますね。
「爪のようなもの・最後のフェリーその他の短篇」レビュー
「爪のようなもの~」は森泉岳土さんの漫画短編集です。
小学館から発行されています。全10編、232ページです。
ボリューム多めでうれしいですね。
この記事はこのような内容になっています。
魅力①ストーリーがわかりやすくていい
魅力②死や死後の世界といったテーマが芸術的!
収録作品紹介
魅力①ストーリーがわかりやすくていい
前作「村上春樹の『螢』・オーウェルの『一九八四年』」は小説をもとにしていたため、ちょっと難しい印象を受けましたが、「爪のようなもの~」の収録作品はわかりやすいですね。
ホラーっぽいものもあったり、ボーイミーツガールがあったりと誰でもなじみのあるようなストーリーがあります。
森泉さんの墨と爪楊枝を使った独特な線で色々なテイストの物語が読めるのが楽しい短編集ですね。
魅力②死や死後の世界といったテーマが芸術的!
「爪のようなもの~」の収録作品は死や死後の世界を感じさせるものが多いです。
なんとなく一貫したテーマが作品全体の芸術性を高めていますね。
収録作品の「Two Shades of Summer」は2020年4月に亡くなった映画監督の大林宣彦さんを描いた作品です。
大林宣彦さんは森泉岳土さんの義父でもあります。
この本を大林監督が見守ってくれているような気がしてなりません。
大林宣彦さんのご冥福をお祈りいたします。
収録作品紹介
「爪のようなもの~」の収録作品はつぎ10編です。
最後のフェリー
片岡義男の「彼女のリアリズムが輝く」
タゴールの「妖精」
リングワンデルング
ムルの顔
Two Shades of Summer
夏の夜のけものfeat.けもの
冬の偶有的神秘エトセトラ
爪のようなもの
毒
最後のフェリー
ヴェネツィアの美術館の研修生タクヤと、現地のダンスカンパニーにかようジョルジャとの恋愛を描いています。
「最後のフェリー」は森泉さんがはじめてボールペンを使って描いた作品でもあります。
私はあとがきを読むまで気づきませんでした。
森泉さん独特の線の感じがちゃんと失われていなかったからですかね。
レンガや石畳の質感がヴェネツィアの旅情を感じさせます。
せつないながらも温かみを感じる恋愛作品になっていますね。
タゴールの「妖精」
インドの詩人・タゴールの「もっとほんとうのこと」をもとにした作品です。
「もっとほんとうのこと」もタゴールが孫娘にのこした遺言的な作品といわれています。
蓮の花や蝶などインド風なデザインが美しい作品ですね。
リングワンデルング
大きな屋敷に住み込みで働くつかさとその屋敷に一人で住む月子の話。
うってかわってサスペンスホラーです。
凝ったアングルが映画みたいでおもしろいですね。
墨でえがいた暗がりが怖いながらも美しいです。
冬の偶有的神秘エトセトラ
13才のコースケと公園橋にいる明るい女子高生の幽霊(?)の話です。
他の作品に比べるとめちゃめちゃ俗っぽくて親しみを感じます。
ポップな絵柄だったらきっと全然違う印象を受けると思いますが、森泉さんの味のある絵で描かれるから意味があるって感じです。
舞台にモデルがあるらしいですが森泉さんはヒミツにしています。
でもなんか世田谷っぽいです。
まとめ
「爪のようなもの~」はビックコミックオリジナルやモーニングなどのお馴染みの青年誌からミュージシャン・けものさんが刊行した異色の雑誌ZINEまで多彩な刊行物に掲載された作品をあつめています。
それだけに、親しみやすいものから詩的なものまでいろんなストーリーのものが収録されています。
それなのに、一貫したテーマを感じさせるのが不思議ですね。
「爪のようなもの~」、ぜひ読んでみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
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