1巻完結,短編集

漫画「村上春樹の『螢』・オーウェルの『一九八四年』」とは?

村上春樹読んだことないし、どれから読んでいいかわからない

という人はまずマンガから読んでみるのはいかがでしょうか。

大丈夫です。私は恥ずかしながら村上春樹作品を読んだことがありません。

だから、この作品は私にとって初めて触れる村上春樹作品です。

読めば、きっと村上春樹さんの他の作品を読みたいと思うでしょうし、

作者の森泉岳土もりいずみたけひとさんのマンガも読みたくなりますよ。

また、村上作品はマンガ化されたものも少ないようですから、

ファンも見逃せない一冊になっているんじゃないでしょうか。

スポンサーリンク

大人の漫画短編集「村上春樹の『螢』・オーウェルの『一九八四年』」

この記事の内容はこんな感じです。

・作品概要

・「螢」あらすじ

・「螢」感想

・「一九八四年」あらすじ

・「一九八四年」感想

・森泉岳土さんの絵について

作品概要

「村上春樹の『螢』・オーウェルの『一九八四年』」森泉岳土さんのマンガです。

2019年に河出書房新社から発売されました。

「螢」は男女の切ないラブストーリー、

「一九八四年」はディストピアフィクションですが、

どちらも2人の男女を描いていることが共通しています。

エロティックな場面がありながらも上品に描かれていて、

まさに大人のマンガですよ。

「螢」あらすじ

「螢」は青年たちの青春と別れを描いた短編です。

「ノルウェイの森」のもとになったと言われています。

「彼女」「友人」は小学校からの幼なじみでなんとなく恋人同士になりました。

「僕」と「彼女」と「友人」は高校生のときから知り合い、やがて3人だけで遊ぶようになりました。

しかし、ある日の夜、「友人」は自殺してしまいます。

東京の大学に通っていた「僕」は半年ぶりに「彼女」と出会います。

偶然再会した「僕」と「彼女」は度々会うことになりました。

お互いに踏み込みたいけど踏み込まないまま季節が過ぎていきます。

ある夜、「僕」と「彼女」は一夜を過ごします。

しかし、「彼女」は別れの手紙を残して「僕」のもとから去って行くのでした。

「螢」感想

友人の死が暗い影を落としていますね。

単純に考えれば、「僕」と「彼女」が結ばれてめでたしめでたしといきたいところですよね。

でも、別れの結末については、「まあ、そうだろうな」と年を重ねた人ならなんとなく納得してしまうんじゃないでしょうか。

「僕」も「彼女」も空虚な表情で描かれていて、感情をうかがうことが難しいです。

「僕」が「彼女」と寝たのが悪かったとか、

「彼女」に「彼」に対する罪悪感があったからとか、

言葉にしてしまうと野暮な感じです。

「彼女」の目、鼻、口が消えてしまっているコマが印象的です。

「一九八四年」あらすじ

「一九八四年」はディストピアを描いたフィクションです。

世界は

アメリカ、イギリスをはじめとしたオセアニア

ロシアをはじめとしたユーラシア

日本、中国をはじめとしたイースタシアの3つの国と

それ以外の中立地帯に分かれていました。

この物語はオセアニアの一部である現在のイギリス・ロンドンを舞台にしています。

1984年、オセアニアは全体主義国家になっていました。

ユーラシアと戦争を起こし、

報道・娯楽・芸術は検閲され、真実はねじまげられていました。

また、政府はテレビスクリーンのようなモニターを通して国民を監視していました。

主人公のウィンストンはそんなオセアニアで検閲の仕事をしています。

ウィンストンは国の仕事に従いながらも、

「個人の考えまでは変えられないし、自由だ」という信念を持っていました。

そこで、ウィンストンは一人の女性・ジュリアと出会います。

2人は愛し合いますが、国家によって引き裂かれます。

「一九八四年」感想

「螢」のほうに比べて、

「一九八四年」のほうが分かりやすい物語だし、感情が伝わってきますよ。

「一九八四年」は、人の思考が国家に操作されてしまって、

自分の考えを正しく言葉にできなくなってしまっているシーンがおもしろいですね。

考えと表情が裏腹になっている様子をマンガで表現した新しい試みだと思いました。

森泉岳土さんの絵について

・ジュリアがエロい

・感情が描かれすぎていないこと

・水と墨で描く独特の技法

ジュリアがエロい

いろいろと上品に語ってきましたが、

そんなことより「一九八四年」のジュリアがエロいんですよ。

生々しい感じがいいです。

ショートカットで積極的なジュリアにだれもが恋してしまいます。

感情が描かれすぎていないこと

森泉岳土さんは最初は表情を書きたくなかったという逸話があります。

「螢」も「一九八四年」も人の感情を描きすぎると失敗してしまうような作品だと思います。

マンガを読んでいても、「感情は文章で察して」という思いが受け取れます。

この2つの作品は森泉さんにうってつけだったのかもしれませんね。

水と墨で描く独特の技法

森泉岳土さんは水で線を描いてそこに炭を落とすという独特の技法で描いています。

「螢」の中では、冬の寒さや蛍の光、

「一九八四年」の中では、独裁国家の重苦しい雰囲気や冷たい雰囲気を巧みに表しています。

変わった技法ですが、表現の幅の広さに驚きますよ。

スポンサーリンク

まとめ

「一九八四年」は1949年に、「螢」は1984年に、そしてこのマンガは2020年に発売されました。

そして、「一九八四年」は村上春樹さんの小説、「1Q84」の元になり、「螢」は「ノルウェイの森」の元となった物語です。

運命的なものを感じますよね。

ただ2編だけの短編集なのですが、不思議なつながりが感じられる作品だと思います。

また、「めでたしめでたし」で簡単に終わらないストーリーなのに、

愛の大切さというシンプルなテーマが伝わってくるあたりは大人なマンガといえるんじゃないでしょうか。

ぜひ読んでみてください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました