山田参助さんの「あれよ星屑」が2020年7月にフランスの漫画賞「Prix Asie de la Critique ACBD 2020」を受賞しました!
「Prix Asie de la Critique ACBD 2020」はフランスのバンド・デシネの批評家とジャーナリストの協会(ACBD)が主催するアジアの優れたマンガに贈られる賞です。
「あれよ星屑」は2019年には第48回日本漫画家協会賞 大賞(コミック部門)と第23回手塚治虫文化賞 新生賞に輝いています。
あらすじや魅力についてたっぷり紹介しますね!
山田参助「あれよ星屑」あらすじ・魅力
この記事はこんな構成になっています。
あれよ星屑 あらすじ
言葉がリアル!
避けては通れない戦後の性風俗!
意味のあるエロティックなシーン!
ポップながらも繊細な筆致!
ストーリーに合わせて絵柄をオマージュ!
戦争の不条理さと人間ドラマ!
まとめ
あれよ星屑 あらすじ
終戦後、空襲で焼け野原になった東京。
戦争から帰った川島徳太郎は闇市の雑炊屋を営みながら酒浸りの生活をしていた。
川島はある日、自分の店で無銭飲食をしていたかつての部下、黒田門松と再会する。
黒田は浅草の知り合いのつてを探すと川島に打ち明けるが、川島にはクニに帰るように言われ冷たくあしらわれる。
アメリカ占領下の戦後を生き延びてきた人々と、戦争によって何かを失ってしまった人々、そして日中戦争や空襲の回想をまじえながら戦争の不条理さ、悲惨さも描く。
大陸で自分の部下の死を見届けるしかなかった川島はどんな落とし前をつけるのか。
言葉がリアル!
「酒ばっかり飲んでると目がつぶれっちまう」とか
「バカも休み休み言いやがれこのトンチキ野郎!」
とかいうセリフの言い回しが当時の雰囲気を盛り上げてくれますね。
出てくる単語も知らない言葉がしばしば出てきます。
「ガンスイ」や「アプレ」などの言葉がセリフに乗ることによって生き生きと聞こえてきますね。
また、戦争中、軍で使われていた「八路」や「便衣兵」などの言葉も勉強になります。
漫画として絵と一緒に物語にのっているからこそひとつひとつの言葉が響いてきますね。
避けては通れない戦後の性風俗!
「あれよ星屑」ではパンパンやストリップショー、戦時中の兵隊相手の売春婦など性風俗で働いていた女性が描かれています。
「あれよ星屑」は性風俗も描くことで戦前と戦後、そして昭和から現代までを結ぶミッシングリンクを描いています。
不潔さや貧しさ、男の性欲を満たすことでしか生活できなかった当時の女性の現状などを描かないとウソになると思うんですよね。
「三丁目の夕日」も朝ドラもノスタルジックでいいですが、顔を汚せば不潔さや貧しさが表現しきれるわけではありません。
「あれよ星屑」は戦前から今現在も東京の下町や飲み屋街で受け継がれるような文化、風俗の系譜を感じさせるんですよね。
懐かしさというより、「現代からたどった先にある過去」という感じです。
意味のあるエロティックなシーン!
「あれよ星屑」はエロティックなシーンもちゃんと意味があるんですよね。
米兵相手のパンパンの悲しい過去は痛々しく、ストリップショーで明るく働く女性のセクシーなシーンは明るく描かれています。
絵柄も少しずつ変えているのがすごいですね。
ポップながらも繊細な筆致!
山田さんの絵は少年誌や少女マンガにはない独特な絵柄なんですよね。
劇画というには少しポップな絵柄は新しさをもって今の時代に受け入れられています。
山田さんはゲイ雑誌や実話誌でマンガを執筆してきた方です。
登場人物の黒田の毛深い顔や少し潰れた目の描き方などにその片鱗をのぞかせます。
子どものころに影響された漫画家さんは大友克洋さんや浦沢直樹さん、「ガロ」系の花輪和一さんなどの作家さんで、同級生とは話が合わなかったそうですね。
ストーリーに合わせて絵柄をオマージュ!
「あれよ星屑」の中では、ストーリーに合わせて絵柄をかえているのがすごいです。
手塚治虫さん、つげ義春さん、丸尾末広さんや美人画などのオマージュなどが見受けられて楽しいですよ。
絵柄もそっくりそのままでなく、山田さんなりに咀嚼した絵で「ちょっと似てるかも」くらいなのでストーリーを邪魔しないのが上手いなと思いました。
また、カラーページの色合いや筆使いも戦後昭和の漫画やイラストの雰囲気を感じさせますね。
明るいシーンもあってにぎやかに描かれているので飽きずにイッキ読みできますね。
戦争の不条理さと人間ドラマ!
主人公の川島と黒田の対比も見どころですね。
川島は大学を卒業したインテリ。武家の出ですが物腰が柔らかくて優しい。しかし、父親に対する恨みや戦争の暗い闇をずっと引きずっています。
一方、黒田は毛むくじゃらで熊のようないでたち。頭は良くなくて下町っぽい親しみやすさがある反面、考えなしに残酷なことをやる怖さもあります。
主人公側にいるからといって必ずしも善人というわけではなく、人間の脆さも描かれています。
明るい一面を見せるときもありますが、終盤の展開としてはハードボイルドな物語ですね。
登場人物は現代でも普通に生きていそうな人たちばかり。
「戦争さえなければ」と思わざるをえません。
まとめ
「あれよ星屑」をまとめるとつぎの通りです。
戦後当時を思わせる生き生きとしたセリフ
フタをされてきた性風俗を描いている
絵柄を使い分ける巧妙な筆さばき
魅力的なキャラクターと人間ドラマ
山田さんの絵の巧妙さは万国共通のものがあると思いますが、セリフについてはフランス版の翻訳が素晴らしかったということが山田参助さんのTwitterで語られています。
「あれよ星屑」はビームコミックスのレーベル、KADOKAWAから出版されていて、今ならKindleで3巻がセール中です。(2020年8月27日現在)
ぜひ読んでみてください!
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
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