1巻完結,短編集

なぜ九井諒子は天才であり続けるのか?『竜の学校は山の上』特徴3選

ファンタジーで多彩な短編が読みたい

と思った人には、九井諒子さんの「竜の学校は山の上」がおすすめですよ。

『竜の学校は山の上』は2011年イースト・プレスから発行された九井諒子さんの短編集です。

九井諒子さんはそれまで同人活動をしていましたが、『竜の学校は山の上』は九井さんにとって書籍化された初めての作品になります。

電子書籍もあります。

九井諒子さんは現在、『ハルタ』(KADOKAWA)で『ダンジョン飯』を連載しています。

九井諒子さんの漫画についてはこちらの記事を読んでください。

おすすめ!天才・九井諒子の漫画作品・短編集まとめ【全部名作です】
漫画家の九井諒子さんについてご存じですか?九井さんの作品のおもしろさ、数ある短編の類型、これまで発表してきた作品についてまとめてみました!独創的なアイディアには驚かされますよ。
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九井諒子処女短編集『竜の学校は山の上』の特徴3選

『竜の学校は山の上』は九井諒子さんにとって初めて書籍化された作品ですが、

かなり完成度が高いです。

この記事の内容はこんな風になってます。

・「もしもこうだったら」を描いた世界観

・「木」をみて「森」もみている

・静かな絵でいろんな登場人物に感情移入できる

「もしもこうだったら」を描いた世界観

RPGをクリアしたとき、

絵本を読んだとき、

「この後、どうなったんだろう」

と思いませんか?

もしくは、

「もし、羽が生えている人が一緒のクラスだったら」

「竜が普通の動物と同じようにいる世界だったら」

と思うことがありませんか?

『竜の学校は山の上』ではそんな短編が出てきます。

だれもが思いつきそうで思いつかなかったようなことを、

九井諒子さんは物語としてかたちにしてくれています。

『竜の学校は山の上』の収録作品は大きく二つのパターンに分けられます。

RPGまたは童話の世界を舞台にした話と

現実世界にもし、ファンタジーを持ち込んだらという話です。

最初の「帰郷」というお話は、

RPGの勇者が魔王を倒したあと、もし故郷に帰ってきたらという設定です。

「魔王城問題」というお話は

魔王がいなくなったあとのお城に住もうとする人たちの物語です。

「現代神話」というお話は、

半人半馬のケンタウロスが普通の人間と一緒に同じように暮らす世界だったらという設定。

表題作「竜の学校は山の上」は、

竜がいる現実世界で、もし「竜学部」という学部がある大学があったらというお話です。

設定を聞いただけでワクワクしてきませんか?

九井諒子さんのお話のすごいところは、設定のおもしろさにとどまらず、

登場人物の心の動きもこまやかに描いているところです。

マクロな視点とミクロな視点

「マクロな視点」とは客観的に物語全体をみることで、

「ミクロな視点」とは登場人物に焦点をあてることって言いたかったんですよね。

『竜の学校は山の上』ではその両方をやっています。

客観性

物語を読んでいるとき、あなたの意識はどこにありますか?

普通は、「もし、自分がこの人だったら」と登場人物に感情移入すると思います。

しかし、『竜の学校は山の上』では九井諒子さんが客観的に世界をとらえていることが感じられます。

たとえば、

「もし、魔王のお城に住むとしたらこんな問題が出てくるだろう」

「じゃあ、人間たちにこういう風に対処させよう」

という、まるで自分が神様になったかのような感じです

読んでいても自分が物語の神様になった気がしてきますよ?

主観性

『竜の学校は山の上』は客観的な視点だけでなく、

登場人物にもちゃんと焦点を当てています。

「羽が生えて飛ぶってどんな気持ちだろう」とか

「魔王を倒した勇者ってどんな気持ちだろう」とか

実際にその世界で生きている登場人物の気持ち丁寧に描いています。

丁寧な心理描写がされていると物語の中にすっと吸い込まれるような気持ちがします。

静かな絵でいろんな登場人物に感情移入できる

『竜の学校は山の上』ではあまり強弱のない線で描かれています。

普通、マンガではGペンなどの強弱がつけられるペンで質感や動きを表現します。

線に強弱がないことによってどのような効果が生まれると思いますか?

線に強弱がないと絵が静かになり、物語の中に入り込みすぎなくてすみます。

また、登場人物の顔は、

目の光があまり描かれておらず、鼻もない時が多いです。

特徴的な顔の書き方によって、

表情の変化はあるものの、感情移入しづらくしています。

それによって物語を客観的に見られ、

同時に、いろいろな登場人物の視点を体験することができますよ。

たとえば、

羽が生えている子の気持ちと、普通のクラスメイトの気持ち、

勇者の気持ちと、王様の気持ち、

どの視点からも物語をみることができます。

『竜の学校は山の上』の一つ一つの話の中に主人公といえる人はいるのですが、

「主人公でなくこの人の気持ちだったら」

と考えることができる不思議なマンガですね。

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まとめ

九井諒子さんは『竜の学校は山の上』でデビューしました。

当時はおそらく20代前半だったと思いますが、

恐ろしいほどのストーリーの完成度です。

また、絵の完成度も高いです。

加えて世界観が独創的です。

『竜の学校は山の上』からは処女作ならではの伸び伸びと描いている様子がうかがえます。

天才の処女作をその目で確かめてみませんか?

ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。

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