どうもこんにちはきたはちです。
5巻以内完結や短編集など短いマンガをこよなく愛しています。
このブログでは主に短くてサクッと読める新刊マンガの感想をお伝えしています。どうぞよろしくお願いします。
川勝徳重さんの短編集『アントロポセンの犬泥棒』が9月10日に発売されました!おめでとうございます!
この記事では、『アントロポセンの犬泥棒』の魅力、内容を紹介します!一部でアダルト扱いになっている理由もかんがえてみました。
『アントロポセンの犬泥棒』ってどんなマンガ?
構造を撃て!!
「抵抗」はYouTube動画(2分36秒)から動画から始まった。
近代都市の矛盾を撃ち、変革の予兆を高らかに謳いあげる衝撃の劇画集。
クラシックにしてアヴァンギャルド。新時代のリアリズムを鮮烈に指し示した『電話・睡眠・音楽』から3年。漫画表現の最前衛を更新する超待望の最新作品集。
【収録作】
野豚物語
犬泥棒
リヤドロの置物
美しいひと
換気扇
多重露光
ロイコクロリディウムの恐怖
『アントロポセンの犬泥棒』 Amazon詳細ページより
川勝徳重さんのマンガに出会ったのは国立新美術館で開催されていた文化庁メディア芸術祭の作品展でした。
選出作品の『電話・睡眠・音楽』を読んだのですが、ほかのマンガよりもアート色が強かったのを強烈におぼえています。
最近では、藤本タツキさんの『ルックバック』のアシスタントもつとめています。
今回の『アントロポセンの犬泥棒』は前作以来、3年ぶりの短編集。絵柄の違いとしては、今回のほうがよりはっきりしたトーンやベタ使い。話の方向性もよりはっきりとした印象です。
一貫して感じるのは、「こわいものみたさ」。みたいけど、みたくない。みたくないけど、クセになる。そんなことをテーマにした作品が連なっています。
つげ義春をはじめとするガロ系作品へのオマージュも感じられます。
野豚物語
ある女性が深夜に見たかわいい子豚の動画。 女性はそれ以来、豚に執着することに。
別の日、動画を検索していると、屠殺の動画をみつけてしまいます。
「飼育」、「鑑賞」、「抵抗」の3編にわかれた本作。
ペット用の豚、家畜としての豚。人間にとって豚はどういう存在なのか。また、その逆は?
犬泥棒
タイトルの通り、ほんの出来心で犬を泥棒する女性の話。
太い線がクラシックな感じ。
泥棒しても、なんの悪気も感じていない主人公がアナーキーです。
リヤドロの置物
のらくろが主人公のゆるいタッチのマンガ。
ある日、のらくろが起きるとあたり一面が海に。
のらくろは小舟に乗って町田にある別れた彼女の家に向かいます。
のらくろが30歳くらいの男性のように描かれているのが滑稽です。
なんとなく後味の悪い感じもシュール。
個人的に別れた彼女が町田あたりに住んでいたことがあるので、よりリアルに感じました。
美しい人
エッセイ的な物語。
サラダに虫がまざっていたインド料理店の店主。掃除が荒っぽい店員。それはその人の一面でしかない。美しい人とはなにかかんがえさせられます。
換気扇
換気扇に吸い込まれるタバコの煙をテーマにした掌編。女性がおいていったタバコを吸いながら、さまざまな思いがめぐります。
タバコを吸っているときって、いろいろな考えが浮かびますよね。
多重露光
子どもの頃を振り返る私小説的な作品。
さまざまなことを思い出しながら、当時、いじめられていたMに思いをはせます。
主人公は昔、水のないプールに突き落とされた思い出がありました。
自分は本当に突き落とされたのか。それとも?
記憶があいまいになっていく感じがなんともいえない不安をさそいます。
ロイコクロリディウムの恐怖
私小説的なマンガが多い中、あきらかに異質なホラー作品です。
ロイコクロリディウムとはカタツムリに寄生する寄生虫。カタツムリの目に寄生し、わざとめだつことで鳥にたべさせるようしむけます。カタツムリもろとも鳥に食べられた寄生虫は、糞によって子孫を増やすのです。
中学生の弟と高校生の姉。弟は不登校で引きこもり。しかも、癇癪持ち。
姉が弟に教えたロイコクロリディウム。
弟は、この寄生虫の妄想にくるしめられることになります。
ぼくもYouTubeでこの寄生虫の動画をみたような気がします。
中学生の不安定な心を妄想をふくらませて描いています。妙に現実味があるのが恐怖をあおります。
なぜアダルト扱いに?
『アントロポセンの犬泥棒』は楽天koboでアダルト扱いになっています。おそらく最後の『ロイコクロリディウムの恐怖』が原因でしょう。
この作品には男性器の描写が登場します。しかし、この作品における男性器は性的な興奮をあおる目的ではなく、物語の重要な要素としてあつかわれています。
幼い子供が読むのはおすすめしませんが、アダルト扱いにするほどではなないと思います。
まとめ
というわけで今回は以上です。最後までよんでくださってありがとうございました。
『アントロポセンの犬泥棒』は先進的な息吹を感じさせつつ、ガロ系マンガのようなクラシックさがある短編集です。ぜひ読んでみてくださいね。
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