![](https://kitamanga.com/wp-content/uploads/2020/05/hatena-min.jpg)
つげ義春のマンガってなんか芸術的でとっつきにくい
という人向けに、小学館文庫の「ねじ式」に収録されている作品で解説していきます。
難しく考えずにつげ作品を読んでみてくださいね。
私がつげ義春さんの存在を知ったのは、実写映画になった「ねじ式」です。
1998年に浅野忠信さんが主演をつとめました。
つげさんは2020年にフランス・アングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞を受賞されました。
2020年4月からは講談社から全22巻の「つげ義春大全」が毎月2巻ずつ発売されるなど近年再び注目をあつめています。
『つげ義春日記』の次は、『つげ義春大全』! まもなく刊行開始です(2020年4月より)全22巻、全巻予約購入者にもれなくプレゼントも。https://t.co/QzwJNjMlAi#つげ義春 #つげプロ #つげプロジェクト #講談社 #つげ義春大全 pic.twitter.com/lteJgw3Cll
— つげプロジェクト(📚) (@tsugepro) March 20, 2020
大人のマンガ講座 つげ義春 エロ&シュール!初心者でもわかる!
つげ作品の楽しみ方はストーリーやメッセージ性は考えないでシーンごとの強烈な印象を感じることです。
つげ義春さんの作品は起承転結では言い表せないようなストーリーのものが多いです。
そのため読んだときに困惑してしまうかもしれません。
しかし、つげ作品が無意味を追求していることを知れば読み方も変わってきますよ。
2014年の芸術新潮のインタビューで、つげさんは「芸術は意味を排除するのが目標」という言葉を残しています。
現実は無意味だから、リアル感を追求していくと夢のような無意味なものになっていくということみたいです。
たしかに、つげ作品は意味やメッセージ性がわかりにくいものが多いですが、出てくる場面の印象が強烈に残る作品ばかりです。
難しく考えながら読むのも好き好きですが、
あまり深読みせず、印象だけを追っていけばいいということですね。
参考:【美術解説】つげ義春「日本の前衛漫画作家の代表格」 ― アートペディア
つげ義春さんについて
つげ義春さんは1937年生まれで現在もご存命です。
1955年、18歳の時に漫画家としてデビューしました。
精神的な疾病をかかえいて、度々自殺未遂を図っています。
1968年、本作の表題作の「ねじ式」で成功し、マンガ界だけでなく芸術界からも高い評価を得ました。
「ねじ式」、「ゲンセンカン主人」はその後実写映画化されます。
現在は漫画家としては活動しておらず、絶筆しています。
「ガロ」以前、「ガロ」以降
小学館文庫の「ねじ式」には雑誌「ガロ」の創刊期、1965年以降の作品が収録されています。
「ガロ」以前は貸本漫画を描いていましたが、創作に行き詰まったり、困窮したりしていました。
「ガロ」以降作品まとめ ― 小学館文庫「ねじ式」
小学館文庫の「ねじ式」に収録されている作品をおおざっぱに分けるとつぎの通りになります。
・シュール&エロティック(1960年代後半)
・時代物(1965年ごろ)
・旅もの(1960年代後半)
・メッキ工時代(1970年代)
・夢日記(1970年代)
・虚無期(1980年代)
シュール&エロティック
![](https://kitamanga.com/wp-content/uploads/2020/05/3267815_s-min.jpg)
「ねじ式」、「ゲンセンカン主人」は1968年に「ガロ」で発表されました。
2つともつげさんの代表作で評価が高い作品です。
「ねじ式」では目医者の看板が、「ゲンセンカン主人」では天狗のお面が印象的に登場してシュールです。
また、セックスシーンがエロティックに描かれています。
シュールとエロティックが幻想的に交わり、唯一無二の世界を作っています。
時代物
「噂の武士」という作品では時代劇を描いています。
ただの勧善懲悪ではなく、人間の浅ましさや業の深さを感じさせます。
旅もの
![](https://kitamanga.com/wp-content/uploads/2020/06/3561448_s-min.jpg)
つげさんは旅の思い出もマンガにしています。
「長八の宿」という作品は伊豆の宿に泊まったときのことを題材にしています。
宿のジッちゃんやマリちゃんとの交流が描かれ、ユーモアを感じます。
そんなに大笑いするわけではないですけどね。
旅情を感じ、つげ作品の中でもほっとする作品です。
メッキ工時代
つげさんは小学校を出てすぐにメッキ工場で働き始めます。
「大場電気鍍金工場」、「少年」はメッキ工時代の経験をもとにした作品です。
工員のガラの悪さや、劣悪な作業環境など、暗い印象を受けます。
夢日記
「ヨシボーの犯罪」では脈絡のないストーリーなど無意味の追求に拍車がかかっています。
わざとパースを狂わせた背景などは本当に夢の中の世界のようです。
虚無期
「ガロ」以前、つげさんは水木しげるさんのところでアシスタントをしていました。
そのころを描いた「ある無名作家」は後期の作品です。
つげさんと同時期にアシスタントをしていた奥田さんという人を題材にしています。
人生の無常観と何とも言えない虚無を感じます。
大全にするか?文庫にするか?
私は書店で小学館文庫の「ねじ式」を購入しました。
つげさんの代表作、「ねじ式」が収録されている作品でAmazonで新品で手に入るものは、
最初に紹介した2020年発売の「つげ義春大全」第16巻(講談社・コミッククリエイトコミック)、
2008年の「つげ義春コレクション ねじ式/夜が掴む」 (ちくま文庫) 、
そして、私の持っている「ねじ式」(1994年、小学館文庫)の3つです。
講談社の「つげ義春大全」は年代順に刊行していてサイズが大きめ、
ちくま文庫の方は小学館文庫と同じくガロ以降の作品が収録されていますが、
ちくま文庫は全9巻、小学館文庫は全2巻です。
値段は小学館文庫が税込639円、ちくま文庫が836円、講談社の大全が3,300円です。
ebookjapanでは「ねじ式」他5編が入った作品集が電子書籍で330円で手に入ります。
コレクションなら「つげ義春大全」、手軽に楽しみたいなら「小学館文庫」、中間が「ちくま文庫」かebookjapanの作品集ですね。
まとめ
つげ作品は難しそうですが、時代と作品の傾向に分けて体系的にまとめるとより分かりやすく読めますよ。
私は、旅ものの「長八の宿」も好きですが、
「チーコ」という文鳥を飼う話が強く印象に残っています。
今、再び注目が集まっているつげ作品。代表的な「ねじ式」からまず読んでみませんか?
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
電子書籍も探してみてくださいね。
コメント