シュールで笑えるけどなんか哲学的なの読みたい
そんなマンガを読みたければ、「弥次喜多 in DEEP」がおすすめです。
久しぶりに読み返してみたんですが、
ディープでシュールな世界観にどっぷりハマれて満喫できますよ。
「弥次喜多 in DEEP」はしりあがり寿さんの作品で全8巻です。
第5回手塚治虫文化賞・マンガ優秀賞を受賞しています。
「真夜中の弥次さん喜多さん」の続編ですが、本作だけでも楽しめます。
コミックビーム(エンターブレイン)で1997年から2002年に連載されていました。
十返舎一九の「東海道中膝栗毛」をベースに、
男らしい弥次さんと金髪でヤク中の喜多さんのゲイのカップルがお伊勢さんを目指すストーリーです。
謎の「白眉様」をあがめる村に立ち寄ったり、
地面に足がくっついて動けないヤマモクさんに出会ったり、
シュールな旅が続きます。
やがて二人は生と死、夢とリアルの区別もつかない混沌とした世界に迷い込みます。
「弥次喜多 in DEEP」シュールでディープなマンガ体験!魅力7選
・シュールで笑える
・哲学的
・不思議な世界
・夢と現実
・生と死
・風刺
・ディープな没入感
シュールで笑える
![](https://kitamanga.com/wp-content/uploads/2020/05/50885_s-min.jpg)
「弥次喜多 in DEEP」は最初からシュールな展開で度肝を抜かれます、
だんご屋のおやじが登場した次の瞬間、娘に変わっています。
娘に変わったと思ったら今度はヘチマになってしまいます。
「ヤマモクさん」は地面に足がくっついて動けないハゲたおじさんの話です。
あまりに誰も来ないので、意味のない話を延々とします。
しりあがり寿さんのヘタウマな絵と
支離滅裂、奇妙奇天烈、ナンセンスな展開が笑えます。
哲学的
![](https://kitamanga.com/wp-content/uploads/2020/05/1857389_s-min.jpg)
シュールでナンセンスなマンガかと思ったら、哲学的な問いも出てきます。
地面に根っこが生えてしまった「ヤマモクさん」は
どこに行くこともできず、何を考えてもわからない自分の存在に疑問を感じます。
「自分に生きる意味なんてあるのか」
誰でも一度は考えるのではないでしょうか。
混沌とした世界の中で、二人はお伊勢さんを目指しますが、
果たしてなぜお伊勢さんに行くのか物語では述べられません。
そもそもお伊勢さんがどこにあるのか、どういうところなのかさえわかりません。
「なんだそりゃ」
と思いますよね。
でも、生きる目的が不明確になっている人が多い現代社会で、
弥次さん喜多さんのことを果たして誰が笑えるでしょうか。
「お伊勢さんに行く」という目的があるだけ、弥次さん喜多さんのほうがましかもしれませんよ。
不思議な世界
弥次さん喜多さんはとある旅の宿で「ふりだしの畳」がある部屋に通されます。
「ふりだしの畳」を踏むと、畳を踏んだ数秒前に戻っていまいます。
しかし運命は決まっているので、時間が戻っても忘れてまた畳を踏んでしまいます。
無限に繰り返す世界から弥次喜多の二人はどう抜け出すのでしょうか。
無限ループって怖くね?
夢と現実
支離滅裂な珍道中で、二人は夢と現実の境がわからなくなってしまいます。
「夢の緒」という話では、二人はついに夢の中に閉じ込められてしまいます。
支離滅裂が笑えるポイントでもあるのですが、夢の中となると支離滅裂さが逆にゾッとします。
さて、あなたは今、起きていますか?寝ていますか?
この世界が本当に夢の中ではないと断言できますか?
生と死
夢と現実の境がわからなくなっていく中で、
次第にあの世とこの世の世界の境もわからなくなっていきます。
死人が生き返ったり、魂が出ていったり、あの世とこの世を自由に往来できてしまいます。
物語の中盤にして、喜多さんは死後の世界に引きずり込まれてしまいます。
弥次さんは喜多さんを死後の世界から救い出すため、旅を続けます。
風刺
・生きる意味を失った人々 → 目的が不明確な旅
・混沌とした社会 → 夢と現実が入り混じった世界
「弥次喜多 in DEEP」が現実の世界をこんな風に比喩的に表現しているのだとしたら、
風刺マンガとしても読むことができます。
夢と現実の区別がつかなくなった世界でやがて支配者が現れます。
支配者は夢のような曖昧なものを世界から駆逐していこうとします。
はじめはみんなのために信じられる確かなものを決めようとしていたのに、
自分と意見の合わないものを排除するだけになっていきます。
民主主義の皮をかぶったポピュリズムや全体主義に対する批判と受け取ることもできます。
ディープな没入感
弥次さん喜多さんの旅は中盤からさらにディープな世界になっていきます。
中盤からはしりあがり寿さんの描く死後の世界がハイテンションで展開されていきます。
弥次さんと喜多さんもただのゲイのカップルでなく、神格化されてしまいます。
ヘチマから神的世界に飛ばされる没入感は快感すら覚えます。
死後の世界に行ってしまった弥次さんと喜多さんを失った世界は
今までの物語も巻き込みながらさらに行き場を失っていきます。
まとめ
「弥次喜多 in DEEP」はヘタウマな絵にだまされがちですが、
手塚治虫賞をとるだけあって、様々なテーマを巧妙に表現しています。
「弥次喜多 in DEEP」読んで混沌とした支離滅裂の世界にのめりこんでみませんか?
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
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