2~5巻以内完結

祝完結!『バクちゃん』(全2巻)可愛いだけじゃない!どんな漫画?

増村十七さんの『バクちゃん』、完結となる2巻が1月12日に発売されました!おめでとうございます!

宇宙から来たかわいらしいバクちゃんが、地球で一生懸命がんばるストーリー。在留外国人が日本という国で生きていくことの現実が描かれています。

知らなかった現実をひと味違ったかたちで知れたという意味で読んでよかったですが、

「かわいいからとりあえず読んでみよう」

と思って読むと少し面食らうかもしれません。

この記事では、『バクちゃん』の魅力とぼくなりの感想、本作に絡めた在留外国人の現状、オリジナル版との違いなどをまとめていきます!

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『バクちゃん』ってどんな漫画?

「ねぇ? 日本は、東京は、どう見える?」

第21回文化庁メディア芸術祭【新人賞】を受賞した著者が贈る、移民バクちゃんの「すこし不思議」で「すこしリアル」なダイバーシティ物語。

夢が枯れた故郷から地球へやってきたバクちゃん。

永住をめざし賢明に生きるバクちゃんの目にうつる東京は、わたしたち「みんな」の世界かも。

バクちゃん(1) Amazon詳細ページより

「かわいい宇宙人のバクちゃんが地球で巻き起こすドラえもん的なSFコメディ」と思ったら大間違い。外国人が日本で在留資格を取って住み、働くこととはどんなことかを描いています。

ただ、外国人が日本で置かれている状況の厳しさをひたすら訴えるというものでもなく、小さな希望や宇宙人のあっけらかんさも盛り込まれています。もしかしたら、宇宙人が往来するような未来は本当にこうなるかもしれないと感じさせるような世界観です。

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登場人物

バクちゃん

バクの星からやってきたバク星人。地球の夢を食べにきた。既に地球で働いているおじと一緒に住む予定。

ハナ

美術科のある学校に転入するために名古屋から上京してきた女の子。親戚の家に下宿する予定。満員電車でおぼれそうになったバクちゃんを助ける。

ダイフク

謎のイケメン高校生。

魅力①外国人の気持ちがわかる!

『バクちゃん』の世界では、バクちゃんの他にもネコの宇宙人やサイの宇宙人もいます。『バクちゃん』では日本において外国人がどんな思いを抱えているのかがそうした動物たちの姿を借りて描かれています。

「作者の増村十七さんはきっと在留外国人の知人が多いんだろうな」

と思いきや、『バクちゃん』は増村さん自身がカナダに滞在し、永住権をとろうとした経験をもとに描かれているそうです。

日系2世の思い、母国でのキャリアが日本では全く役に立たない現状。

戦争のない日本で日本人として生まれたことがどれほど恵まれたことなのかを実感できます。

魅力②それでもあっけらかんとした宇宙人!

「これが日本に住んでいる外国人の現状か」と思うと胸が苦しくなってきますが、当の宇宙人は意外とあっけらかんとしていることに救われるんですよね。

日本人のパートナーとデートしたり、パーティーをしたり。

辛い目にあっても、割り切って次へ進めるタフさに感心させられます。

魅力③宇宙人の健気さ!

自分が辛い目にあったとしても、反発することなく引き下がる宇宙人たち。決してそういう宇宙人ばかりではないとは思いますが、『バクちゃん』では宇宙人の健気さも伝わってきます。

宇宙人たちは、反発すればもっと不利な状況になるということを知っているのかもしれません。もしくは、「外国人が日本でどう振舞えばよいか」という自分なりの答えがあるのかもしれません。

外国人の気持ちに寄り添いたくなるようなシーンが散りばめられています。

在留外国人について調べてみた!

『バクちゃん』を読んで外国人のことを知ったつもりになっても仕方ないので、自分でも身の回りの外国人について考えてみました。

日本の在留外国人の数は2012(平成24)年以降、右肩上がりでしたが、2020年にはコロナの影響でわずかに減少し、約288.5万人。日本の総人口の約2%です。

日本に住む外国人の数は?日本で働く外国人の数は?日本に住む外国人まるごと解説~【2020年6月末 最新版】在留外国人統計より~(グローバルパワーユニバーシティ)より引用

ぼくは栃木県に住んでいますが、栃木県の在留外国人は2019年には42,835人になっています。栃木県の人口の約2%であり、全国平均と同じくらいといえますね。東京、千葉、神奈川にはかないませんが、北関東の栃木、群馬、茨城も意外と多いみたいです。

そもそも「移民」とは何か?

このマンガの紹介文には「移民」という言葉が出てきます。日本に住んでいる外国人を「移民」と表現しているのはあまり聞いたことがありませんよね。そもそも、移民とはなんでしょうか?

移民の明確な定義はないようですが、辞書によると「永住を望んで他の国に移り住む人々」を指します。

日本はアメリカやドイツと違って移民政策をとっていませんが、外国人労働者として在留することは認められています。だから、日本にすむ外国人に対して「移民」と表現しないんですね。

事実上、日本は定住して働く外国人を受け入れているので、「移民を受け入れている」と言うこともできますが、建前としてはあくまで移民を受け入れないのが日本としての姿勢みたいですね。

したがって、外国人が永住権を得るのにおのずとハードルがあがるのも理解できます。

外国人は本当に病院に行きたがらない?

『バクちゃん』の中で、ホルヘという熊(?)の宇宙人が、車に足をひかれたにもかかわらず病院へ行くのをためらうというシーンがあります。

実際にこのようなことが起こっているのでしょうか?

日本では外国人でも観光目的で短期滞在する場合を除き、医療保険に入る必要があります。ホルヘは剪定の仕事をしていますから、造園会社かなにかの健康保険に入っていると思われます。費用も日本人と同じ3割負担。

「じゃあ病院行かない理由がないんじゃ?」と思いますよね?

しかし、2015年の日本病院会の調査によると、外国人受け入れの際の課題として、病院の95.8%が「言語・会話」、43.7%が「治療費の不払い」を挙げています。

外国人の患者や医療者の受け入れ、最大の壁はやはり「言語・会話」―日病調査(GemMed)より引用

外国人への意識調査は探せなかったので確かなことはいえませんが、外国人が日本の病院を受診したがらない理由はなんとなく見えてきますよね。

『バクちゃん』って本当に移民について正しく伝えてるの?

『バクちゃん』が日本における在留外国人の現状を正しく描いているかは正直わかりません。

ただ、作者の増村さん自身が移民だったので、少なくとも移民の気持ちを描いていることに一定の説得力はありますよね。

しかし、意地悪な言い方をすると、もし事実と違う内容だったとしても「これはSFだから」と逃げることはできます。

言えることは、ぼくも『バクちゃん』を読まなければここまで調べなかったでしょうし、今後も興味がわかなかったかもしれません。日本の人が日本に住む外国人について少しでも考える機会を持つために意義深い作品だと思います。

オリジナル版との違い

オリジナル版は増村十七さんのTwitterから読むことができます。

https://twitter.com/i/events/1219636456974622721

オリジナル版は政治的な主張が強いのであまり万人受けはしないかもしれません。しかし、主張したい立場ははっきりしている感じがします。

また、連載版が外国人の社会的な位置付けを描いているのに対し、オリジナル版は外国人の心によりフォーカスした作品のような気がします。

絵もリアルでオシャレな感じがしますね。

ぼくはオリジナル版のほうが好きかもしれません。

まとめ

『バクちゃん』を読むと、日本に住む外国人について思いをはせたくなります。外国人はどんな気持ちで『バクちゃん』を読むのでしょうか。

『バクちゃん』は全2巻がKADOKAWAから発売されています。ぜひ読んでみてくださいね。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

参考:

「バクちゃん」増村十七さんインタビュー 宇宙から来た移民?SFチックに描く日本の現実(好書好日)

日本に住む外国人の数は?日本で働く外国人の数は?日本に住む外国人まるごと解説~【2020年6月末 最新版】在留外国人統計より~(グローバルパワーユニバーシティ)

外国人の患者や医療者の受け入れ、最大の壁はやはり「言語・会話」―日病調査(GemMed)

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