遠田おとさんの漫画短編集「にくをはぐ」が2020年8月4日に集英社から発売されました!
「にくをはぐ」はこれからの漫画と呼ぶにふさわしい漫画短編集になっています。
「にくをはぐ」が2020年代の新しい漫画である理由
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漫画短編集を読んできた一人として、「にくをはぐ」にはこれからの漫画に求められている新しさがあるといえます。
今までの漫画の傾向って?
ひと昔前の漫画であれば、画力が高ければある程度の評価が得られていました。
時代が進んで、ここ数年の漫画の傾向としては、漫画を専業としてしていない人でも作品が発表できるようになり、ストーリーはショッキングでどんでん返しのある作品が受け入れられてきた気がしますね。
これからの漫画と遠田おとさんの漫画は?
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一方、遠田おとさんの「にくをはぐ」はデビュー作から画力が高く、絵が安定しています。
ストーリーに関しては、インパクトを残しつつ、社会問題や家族愛を盛り込んだ深い内容になっていますね。
集英社のWebマンガ誌・ジャンプ+でも表題作の「にくをはぐ」をはじめ、クオリティーの高い読切短編漫画が次々と発表され、話題になっています。
2020年代以降の漫画は、「にくをはぐ」のような高い画力とインパクトがありつつ深みのあるストーリーの作品がトレンドの一つなのかもしれませんね。
遠田おとはどんな漫画家?
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遠田おとさんは2017年に収録作「恋するダビデ」が講談社の隔月誌「ITAN」の主催する第14回スーパーキャラクターコミック大賞で優秀賞に輝き、デビューしました。
デビュー前には「チェンソーマン」、当時は「ファイアパンチ」を連載していた藤本タツキさんのアシスタントをしていたみたいですね。
2018年には「ちはやふる 中学生編」を描いています。
本作「にくをはぐ」は少年マンガ風の絵柄ですが、「ちはやふる~」ではちゃんと少女マンガの絵柄なので、作品によって絵柄を変えられる高い画力をもった漫画家さんだということがわかります。
「にくをはぐ」収録作品あらすじ・みどころ
「にくをはぐ」の収録内容はつぎの通りです。
恋するタビデ
熱い西瓜
2ページ漫画集
にくをはぐ
にくをはぐ後日談
自担をマジで愛してる
小話
遠田おと×もちぎ特別対談
このうち、「小話」は各話を振り返るあとがきのような漫画です。
収録作品の中から3つ選んであらすじと感想を紹介しますね。
恋するタビデ・あらすじ
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パパが海外出張のお土産で買ってきたダビデ像のフィギュア。
ダビデ像は夜の間だけ動けるけど、人間に見られると固まってしまいます。
マリエちゃんはダビデ像があまり好きではありません。
ある夜、マリエちゃんに危機が迫ります。
はたしてダビデ像はマリエちゃんを守れるのか!?
恋するダビデ 感想
夜中におもちゃが動き出す話はよくありますが、それをダビデ像にしちゃうところがおもしろいですね。
ダビデ像の特徴をいかしたシーンがはさまれているのも楽しいです。
熱い西瓜 あらすじ
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高校をやめて家に引きこもっている宗一はいつも笑顔で接してくる母親に窮屈さを感じていた。
宗一が冷蔵庫を開けるとなぜか西瓜が置いてあった。
最近ネットでは自分の感じた思いを相手に感じさせるおまじないが話題になっていた。
条件は種を10粒飲み込んで相手のことを強く思うこと―。
熱い西瓜 感想
ニートや引きこもりやダメ人間を描いた短編って結構あるんですよね。
「熱い西瓜」ではそこにスイカにまつわるアイディアを入れてひねりのある作品にしています。
ただのいい話で終わらせないところが面白いですね。
にくをはぐ・にくをはぐ後日談 あらすじ
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小川千秋は猟師である父が狩った獲物をさばいて食べる動画を撮ってYoutuberをしていた。
胸が大きくて美人な千秋はYouTubeでも人気だった。
しかし、千秋は心は男。
性同一性障害だった。
にくをはぐ・にくをはぐ後日談 感想
千秋は幼いころに母を亡くし、父と暮らしてきたんですよね。
父親としては一人娘を嫁に行かせることを望んでるんですが、千秋は期待に応えられないんです。
父と子の葛藤がうまく表現された漫画ですよね。
最後の対談で遠田さんが「親に負けるな!」ということを伝えたいと言っていますが、「親なんて関係ない」っていうことじゃなくて、「自分にウソをついてまで親との衝突をおそれるんじゃない」ってことが言いたいと思うんですよね。
ジェンダーの問題から親子愛まで描いた深い作品です。
まとめ
「にくをはぐ」に収録されている短編は構成がきれいなストーリーなんですよね。
まるで最初からできあがってたかのようです。
「恋するダビデ」もいろいろと直しがあったようですが、どこをどう直したのかわからないくらい完成度が高いです。
遠田さんの絵もうまいですしね。
遠田さんは長期連載を望んでいるようですが、私としてはもうちょっと短編を読んでみたい気がします。
新しい息吹を感じさせるような漫画短編集ですよ。
ぜひ読んでみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
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