「このマンガがすごい！2020」オンナ編５位にランクインした奥田亜紀子さんの漫画短編集「心臓」の紹介です。
カラフルで透明感のある表紙イラストに心惹かれる人は多いんじゃないでしょうか。
複雑な心理描写とハッピーエンドともバッドエンドともつかないような結末は大人の読者には染みますよ。
「心臓」の気になる中身をネタバレなしで紹介していきますね！
奥田亜紀子短編集「心臓」このマンガがすごい！2020 ５位の漫画とは？
こんな内容になっています。
・概要
・人物描写がスルドイ！
・表情がシンプルだけどリアル
・トーンの陰影表現がうまい
・作品一部紹介
概要
奥田亜紀子さんの短編集「心臓」は2019年にリイド社・トーチコミックスから発行されました。
「このマンガがすごい！2020」オンナ編５位、「THE BEST MANGA 2020 このマンガを読め！」で４位に選ばれています。
全164ページ、６作品が収録されています。
・心臓
・ニューハワイ
・DREAM INTO DREAM
・やま かわ たえこ
・るすばん
・神様
奥田亜紀子さんは1980年生まれ、岐阜県出身の方です。
2013年に「ぷらせぼくらぶ」（小学館・IKKI COMIX）を発表、小説の装画などの仕事もされています。
人物描写がスルドイ！
「心臓」に収録されている作品は、田舎のノスタルジックな情景から、世知辛い人間関係、人生について絶望をかかえた人々などを描いています。
大橋裕之さんとの共作はちょっとシュールなコメディ作品になっていますよ。
注目は人物描写ですね。
悪い人は悪く、いい人はひたすらいい人に描かれているわけでなく、いい面も悪い面も持った登場人物たちが現れます。
実際も根っからの悪人もいなければ、聖人もいないですよね？
ハッピーエンドともバッドエンドともつかない結末は胸をしめつけられるような余韻をのこします。
表情がシンプルだけどリアル
人物の表情はわりとシンプルな線で描いてあります。
表情がシンプルだからこそ感情が伝わってくる面もあります。
だれでも俳優さんみたいに感情表現が豊かなわけじゃないですよね？
シンプルな表情から逆にリアルな感情が伝わってきます。
トーンの陰影表現がうまい
シンプルな表情に対して背景や人物の体の輪郭、影の表現はしっかり描かれています。
なかでもトーンであらわされる影や光の表現が秀逸ですね。
顔に影がかかるだけで人物の複雑な感情が伝わってきます。
柄のあるトーンは使わず、トーンの濃淡やグラデーションのみで表しています。
都会の夜空や自然の木漏れ日は色が浮き出てくるようですよ。
奥田さんの装画が色彩感覚あふれているのも納得です。
作品一部紹介
ここからは「心臓」の収録作品を一部紹介していきますね。
心臓
余命わずかな女子高生・若月しまことその周りに住み着いた小人のような人々を描いた作品です。
小人は小人なりに家族や仕事があるようで、なぜかしまこの頭を耕して農業をはじめます。
高校生という微妙な時期の残酷さが伝わってきますね。
命の大切さや人生について考えさせられる作品です。
ニューハワイ
なおと冬子、冬子の彼氏の物語です。
冬子は高校生以来のなおの友人。
クラスで浮いていたなおに冬子は普通に話しかけてくれました。
現在は、なおはブッ○オフの店員、冬子はヒモでDVの彼氏と一緒に暮らしていますが、昔からいつもニコニコしています。
「ニューハワイ」はアフタヌーン四季賞を受賞した作品です。「心臓」で初出となりました。
クズ彼氏に殴られてもニコニコしている冬子がちょっと怖いです。
物理的な痛みと心の痛みが伝わってきますが、クライマックスで全てをぶっ壊してくれるような感じでなんとなくスッキリする作品ですね。
神様
「その時ワタシは炊飯器だった」
という変わったモノローグではじまる作品。
主人公の四時子の生活をさまざまなモノの視点から描いています。
四時子の恋人サトは結婚を考えていましたが、四時子はあえて話題を避けていました。
四時子には障害を抱えた五時子という双子の姉妹がいたのです。
ファンタジックで心あたたまる作品です。
まとめ
「心臓」は複雑な感情表現に心打たれる漫画です。
トーンを用いた表現は色や輝きだけでなく、登場人物の感情まで伝わってくるようですね。
「このマンガがすごい！」と素直に言えるような短編集です。
ぜひ読んでみてくださいね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
電子書籍も検索してみてください。
コメント