こんにちは、きたはちです。
5巻以内完結や短編集など短いマンガをこよなく愛しています。
すぎむらしんいちさんの「最後の遊覧船」完結となる2巻が11月30日に発売されました!おめでとうございます!
すぎむらしんいちさんについては、先日Eテレでやっていた「浦沢直樹の漫勉neo」で恥ずかしながら初めて知りました。
笑えるんだけど人生の悲哀が感じられて、「質の高いマンガを読んだな」っていう満足感があります。恋愛も描かれていますが、コメディよりの連続ドラマみたいですね。おすすめです。
あらすじや魅力を紹介していきますね。
最後の遊覧船 あらすじ
絶望の果てで回るラブ・ロマンス、出航!!
「どいつもこいつも世界が終わりだって知らないの?」
恋に、仕事に、SNSに追い詰められ故郷のある湖・幻舟湖まできた脚本家・湖尻洋子。
全てから逃げる先である実家はもう目と鼻の先。
だが、その時彼女は思いもしなかった。
まさか自分が、まるでループするようにこの遊覧船に乗り続けることになるとは…!!?
最後の遊覧船 1巻 Amazon商品詳細ページより引用
「漫勉」では主人公の洋子がダメな女と紹介されていました。確かに、男と関係を持ってしまったり、仕事を投げ出しちゃったりするんですが、でも、なんだかんだで自立してるし、なにより美人だし、かわいいなと思っちゃうんですよね。その時点でぼくはもうすぎむらさんの術中にハマってるんですが。
かといって、ただのダメな女性のとりとめのないような話ではなくて、脚本家という職業を生かしたストーリーなんです。1話ごとにオチがついていて、まるで連続ドラマみたいでテンポがいいんですよね。
主要な登場人物
湖尻洋子
脚本家。月9ドラマの脚本を担当するまでの活躍をしているが、主演俳優とのスキャンダルやプロデューサーとの不倫、パクリ疑惑などで炎上し、実家のある幻舟湖に逃げてきた。
船長
遊覧船のイケメン船長。
祐子
遊覧船の売り子。ヤンキー。
ホテルの支配人
洋子が泊まるホテル・レイクサイドの支配人。真面目そうだがなんとなく怪しい。
網走さん
洋子の友人で劇団「犬泥棒」の主宰。本番間近の舞台の脚本を依頼中。
魅力①脚本家の設定を生かしたストーリー!
「まさかあんなことになるなんて、この時は想像すらしていなかったのでした…」
みたいなナレーションってよくありますよね?漫画でもしばしばみられると思うんですが、この「最後の遊覧船」にもナレーションが出てきます。
ただ、「最後の遊覧船」の場合、主人公の洋子自身が脚本家としてつけたナレーションなんです。
洋子は脚本家という職業柄、ドラマのようなナレーションが普段の生活でも浮かんできてしまいます。1話ごとにオチがついているのも連続ドラマみたいです。
まるで「最後の遊覧船」の脚本を登場人物であるはずの洋子自身が作っているみたいで面白いんですよね。
魅力②脚本家を超越した脚本!
マンガって作者の人となりが出るといいますが、「最後の遊覧船」は作り手のすぎむらさんの顔がうまく消えています。結構、クセのある絵柄なんですけどね。
突拍子のない事件も起こるんですが、自然なセリフや、どこかに本当にありそうな観光地の雰囲気によって、読者を自然とその世界に入り込ませてくれるんです。
このマンガの中には、たまに脚本の極意みたいなのが出てきます。ぼくが特に印象に残っているのが、「セリフとは説明である。しかし説明臭くあってはならない。」という言葉です。セリフをわざと説明臭く書いて笑いのシーンにしているところがあるんですが、それ以外のところは確かに説明臭くないんです。すぎむらさんはこれを当たり前のようにやってるんですが、これって「説明臭くないセリフの書き方」をわかってないとできないんじゃないかと思うんですよね。
つまり、あたかも誰かが作ったような物語だと感じさせないのがいい脚本の条件であり、「最後の遊覧船」はまさにそれができているんです。登場人物も本当に生きてるような感じがします。主人公の洋子よりも作者のすぎむらさんのほうが脚本家の腕としては上ということですかね。
魅力③巧妙なモチーフ!
「最後の遊覧船」には2つのモチーフがあります。
1つめは「ループ」です。主人公の洋子は時間が繰り返すループものばかり書いてきました。一方、洋子の乗り込む遊覧船も湖の同じルートをぐるぐる回っているだけです。2つめのモチーフは「脚本」です。
笑えるシーンもしみじみするシーンもありますが、このループと脚本という2つモチーフが物語全体をうまくまとめています。
絵のクセはある
すぎむらさんの絵はクセがあります。体の動きは少ないし、人物の表情もあんまり変わらないです。でも、実際人ってそんなにクルクル表情が変わらないですよね。躍動感のある動きをしている人だってそんなにいないはずです。すぎむらさんの描くキャラクターは本当にいそうな人たちなんですよね。
洋子よりもかわいいヒロインだって他のマンガにいくらでもいるでしょう。でも、読んでいるとやっぱり洋子はかなりの美人だなと思えてくるんです。それは脚本の妙だと思います。
まとめ
「最後の遊覧船」は脚本も登場人物もいいマンガです。ちょっとクセのある絵ですが、一度読めばその世界にのめり込みますよ。洋子は月9のドラマの脚本を担当しているという設定ですが、本当に連続ドラマ化してほしいですね。
「最後の遊覧船」は小学館・ビックコミックスから2巻完結で発売されています。ぜひ、スキータ・デイビスの「The end of the World(この世の果てまで)」と中森明菜の「難破船」を聴きながら読んでみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
コメント