という方に「ブラッドハーレーの馬車」はおすすめです。
「ブラッドハーレーの馬車」は2008年に太田出版から発売された沙村広明さんの1巻完結の短編です。
エロティックな作品を探している人はこちらの記事も読んでみてください。
エロティックだけど悲劇的な「ブラッドハーレーの馬車」魅力4選
落ち込んでいるとき、あなたはどんなマンガを読みますか?
落ち込んでいるときはムリに明るい音楽を聴くよりも、
暗い音楽を聴いたほうが気持ちが落ち着くらしいですよ。
暗く悲しい気持ちにひたりたいなら「ブラッドハーレーの馬車」がぴったりです。
「ブラッドハーレーの馬車」の魅力
1.あまりに絶望的で悲しい
2.運命にあらがえない物語
3.はかなく美しい少女たちへの凌辱
4.痛さ
あらすじ
近代、ヨーロッパと思われるある国でのお話。
貴族・ブラッドハーレー公爵は身寄りのない少女を引き取り、
ブラッドハーレー聖公女歌劇団として彼女たちに舞台に立つチャンスを与えていました。
孤児たちはいつかブラッドハーレー家に引き取られ、舞台に立つことを夢みていました。
しかし、引き取られた孤児たちの多くは歌劇団でなく、別の場所に送られていました。
そこは囚人たちの待つ刑務所。
きらびやかな舞台とは程遠い過酷な運命が少女たちを待ち受けていました。
1.あまりに絶望的で悲しい
私が「ブラッドハーレーの馬車」を読んだときはあまりの絶望に途中で読むのをやめてしまいました。
しかし、改めて最後まで読むと
「この悲劇に終わりが来てよかった」
と少しホッとします。
小公女セーラ
「ブラッドハーレーの馬車」を読むと私が子供のころにやっていたアニメ「小公女セーラ」を思い出します。
「小公女セーラ」で主人公のセーラは父親が破産して死んでしまったために、寄宿学校をやめさせられ、学院で無賃金で働かされる上、ひどいいじめにあいます。
ヨーロッパ的な世界観と自分のせいではないのにひどい目に合う理不尽さに共通性を感じます。
悲劇をどう「楽しむ」か
あなたは悲劇が好きですか?
私は悲劇は好きではなかったです。
それは登場人物に感情移入しすぎてしまうからです。
この年になって、悲劇は楽しんだほうがいいと思うようになりました。
悲劇のヒロインに感情移入してしまうと、悲しいというより絶望や恐怖が強くなってしまいます。
昔も私は怖さしか感じませんでした。
私が悲劇で楽しめているときはヒロインを他者と認識しているからです。
悲劇を読むときは感情移入するよりも悲しみにひたったほうが楽しめますよ。
2.運命にあらがえない物語
「ブラッドハーレーの馬車」は1話完結になっていてそれぞれの話に主人公がいます。
そして多くのお話では悲劇的な結末を迎えてしまいます。
物語は
「こうなったら最悪だな」
という方向に進んでいきます。
「ブラッドハーレーの馬車」の運命にあらがえない物語には、
ある種、童話のような様式美すら感じます。
6話の「澱覆う銀」の終わり方は秀逸です。
悲しみの中にも優しさを感じ、これ以外はないと思えるエンディングです。
3.はかなく美しい少女たちへの凌辱
猟奇殺人の犯人は、恐怖におびえる被害者の顔に興奮をおぼえるそうです。
「ブラッドハーレーの馬車」の少女たちは怯え、囚人たちに乱暴に傷つけられます。
少女たちはまるで人形のようにボロボロになっていきます。
それでも少女たちには希望があります。
それは歌劇団として舞台に立つことであり、
刑務所から抜け出すことでもあります。
それは叶えられない夢です。
傷つけられ、壊れた人形のようになっていっても希望を持とうとする彼女たちに強さとはかなさを感じます。
「ブラッドハーレーの馬車」の少女たちにはエロティックでグロテスクな美しさがあります。
この美しさは本当に少女たちの精神性からくるものでしょうか?
それとも人間に隠された猟奇性からくるのでしょうか?
4.痛さ
沙村さんの絵はいくつもの細い線で描かれています。
沙村さんはインクを使ったつけペンではなくて、先の細い水性ペン「ミリペン」で描いているそうです。
このミリペンで描かれた細い線によって、寒さや冷たさ、痛さが伝わってきます。
「ブラッドハーレーの馬車」では、
「無限の住人」の刃物の痛さや荒涼とした風景の寒々しさとは違う、
ヨーロッパ的な雪の冷たさ、レンガの冷たさ、傷の痛々しさが細い線によって効果的に演出されています。
まとめ
「ブラッドハーレーの馬車」の魅力
1.絶望的で悲しい話にひたれる
2.悲劇的な物語は様式美さえ感じる
3.美しい少女たちの凌辱シーン
4.細い線で描かれるヨーロッパの風景の冷たさと傷の痛々しさ
沙村さんはあとがきで、「エロいマンガにしよう」と思って「ブラッドハーレーの馬車」を描いたそうですが、どんどんエロいシーンがなくなっていったと語っています。
連載したのは「マンガ・エロティックス・エフ」(太田出版)というエロティシズムをテーマにした雑誌だったので、当初の方向性は間違っていないですよね。
エロティックなシーンがなくなっていったにせよ、
各話と最後の美しい終わり方から考えるとそれは必然的なものに思えます。
「ブラッドハーレーの馬車」で少女の悲しみと美しさにひたってみませんか?
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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