こんにちは。きたはちです。
5巻以内完結の漫画や漫画短編集をよく読んでいます。
「本格ミステリもコメディもマンガで手軽に楽しみたい!」
という欲張りな人におすすめの作品「外天楼」を紹介します。
石黒正数『外天楼』は笑えるミステリー!?
『外天楼』は文芸誌「メフィスト」に2008年から2011年に連載され、2011年10月に講談社KCDXより書籍化された石黒正数さんのSFミステリー作品です。
『俺マン2011』第1位
『マンガ大賞2012』第9位
『2012年星雲賞(コミック部門)』ノミネート
『オトナファミ』2011年漫画ランキング第7位
など数々の賞に輝いています。
SFミステリーですが1話完結形式でコメディ要素もあるという変なマンガです。
『外天楼』ってどんな作品?
全10話、1話完結形式で、
コメディメイン回とミステリメイン回が入り混じっています。
「刑事役や探偵役となる人物が現れて謎解きをはじめる」
「犯人が犯行の自白をする」
などのミステリにはかかせないシーンが、1話ごとに挿入されています。
ロボットや人工生命などの技術が発達した世界で、
香港の九龍城を日本の団地にしたような「外天楼」を舞台に話は展開します。
なんで文芸誌のメフィストにマンガが?
「メフィスト」はミステリ小説を中心とした講談社の文芸誌です。
綾辻行人、有栖川有栖、西尾維新などが連載してきました。
『外天楼』はメフィストの読者層であるミステリ小説ファンに向けたマンガとして連載されていました。
笑えるシーンがあるのは本格ミステリを読む合間の息抜きのマンガだったからでしょうか?
1話完結形式だったのはメフィストが年3回の季刊誌だったからでしょう。
1話完結なら前後のつながりがなくてもわかりやすいです。
コミックレーベルであるKCDXのほかに、なぜかマンガ文庫ではない「講談社文庫」からも発行されているのも、「メフィスト」に連載していたからですね。
でも、ミステリ誌に連載されていたことを知らないと、
「なにこれ?どういうマンガ?」
と読んでいる途中で混乱してきます。
ミステリファンも驚くマンガの叙述トリック
『外天楼』はミステリファンをもうならせるような作品になっています。
ミステリのおきまりのシーンがあるだけでなく、
ミステリの手法である伏線や叙述トリックなどを取り入れています。
叙述トリックとは読み手をだますような表現手法です。
たとえば、
「今日は寒いわ」
というセリフを話す「由実」という名前の人物がいたとします。
女性らしい言葉を話していて名前が由実さんだったら誰でも女性だと思いますよね?
でも実際はただの関西弁のおじさん、名前は由実さんだったりします。
『外天楼』では今紹介した文章の叙述トリックではなく視覚を利用した叙述トリックが出てきます。
笑って読んでいたミステリファンも不意打ちを食らうでしょうね。
石黒正数さんはどんなマンガ家?
石黒正数さんはとらえどころのないマンガ家です。
石黒正数さんの代表作はヤングキングアワーズで連載されていた
『それでも町は廻っている』です。
現在は、週刊少年チャンピオンで『木曜日のフルット』を、
月刊アフタヌーンで『天国大魔境』を連載中です。
最新作『天国大魔境』は2019年の『このマンガがすごい!2019』オトコ編第1位に選ばれました。
『それでも町は廻っている』と『木曜日のフルット』は日常系コメディ、
『天国大魔境』はSFミステリーアドベンチャーです。
かなりの振れ幅があります。
SFミステリーという意味では『外天楼』と『天国大魔境』は同じくくりですが、
『天国大魔境』はシリアス路線で行っている分、
『外天楼』はコメディもシリアスもあってとにかく変です。
演劇的ミステリ作品『外天楼』
『外天楼』は一言で言うなら「演劇的ミステリ作品」です。
笑えるシーンもシリアスなシーンも成立させ、クライマックスに向かって盛り上がりを見せるところが演劇と似ています。
短編一つ一つを組み合わせて一つの作品とする構成も演劇にはよくあります。
また、メタ的なところも演劇に似ています。
『外天楼』の第1話はエロ本を捨てた人物を突き止める話です。
その他にも謎解きそのものが笑える話があります。
ミステリおきまりの謎解き展開をあざ笑うかのような、メタ的な描かれ方です。
演劇ファンも見逃せない作品です。
どこで購入した?
私はAmazonで文庫版を購入しました。
当時は書店に行っても一つも見当たりませんでしたが、『天国大魔境』が出てからはコミックスを並べるところが増えた気がします。
まとめ
『外天楼』を最初から結末を考えながら描き上げたとはとても思えません。
それくらいバラバラの話ですが、全部つながっています。
最後にはSFを土台にして倫理観までテーマにしているのではないかとも深読みできます。
ミステリー好きの方におすすめですよ。
何回も読んでみて、この『外天楼』に迷い込んでみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
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