荒木飛呂彦さんのマンガ『岸辺露伴は動かない』。実写ドラマがNHK総合およびNHKBS4Kで12月28日夜10時から3夜連続で放送されました。
この記事では、ドラマ『岸辺露伴は動かない』(以下、『岸辺露伴』)の感想をまとめていきたいと思います!
『岸辺露伴』についてはこちらの記事をご覧ください。
高橋一生の岸辺露伴はクセが強すぎる!?
『岸辺露伴』ドラマ化の一報があったのは10月。高橋一生さんのキービジュアルは衝撃でした。
そして、12月に予告編がはじめて公開。
正直、感想としては「やりすぎなんじゃあないか?」と思いましたね。
高橋一生さんの、あのクセのあるしゃべり方。アニメやマンガを意識しすぎている気がしました。
そして、「だが断る」のセリフ。知らない人にとってはなんのこっちゃわからないとは思いますが、ネットミームにもなっている露伴の有名なセリフです。
しかし、予告編で放送された『富豪村』の原作エピソードでは、「だが断る」というセリフは登場しません。それはファンならお見通しのはず。
原作をなぞりながら陳腐なコスプレショーになるのではないか。
「NHKやっちまったな」「また原作レイプか」
という声が出たのかどうかはわかりませんが、ぼくとしても少し不安な気持ちのまま放送を迎えました。
第1話 富豪村
ある地方の山奥にある別荘地。その別荘地は、別荘を購入した者すべてがその後富豪になったという共通点が。しかし、別荘を購入するには厳しいマナー審査に通過しなければならなかった。
スタンドではなくギフト
主人公の岸辺露伴は、ヘブンズドアーという特殊能力を持っています。『岸辺露伴』の元となるストーリー、『ジョジョの奇妙な冒険』でこの特殊能力は「スタンド」と呼ばれ、様々なスタンドを持った登場人物がバトルを繰り広げます。スタンドは自分の分身のようなもので、スタンドを介してはじめて特殊能力を使用できます。
一方、ドラマの露伴は自分の特殊能力のことを「スタンド」ではなく「ギフト」という言葉で表しています。また、特殊能力を使える人間は基本的には露伴以外には存在しないという設定。分身も登場しません。
ギフトという言葉に置き換えたのは非常にいいアイディアだと思いました。スタンドという言葉からは特殊能力を連想することはなかなかできませんが、「ギフト」であれば、なんとなく「与えられた能力や才能」というニュアンスが伝わりますよね?ジョジョを知らずにこのドラマを観た人にとっても分かりやすいネーミングだったと思います。
「心の扉は開かれる」
ドラマで露伴がヘブンズドアーの能力を使うとき、「心の扉は開かれる」というセリフを言います。ヘブンズドアーは人間を本にして記憶や歴史を読むことができる能力。露伴は「心の扉」という言葉を使ってこの能力を言い表し、ドラマでは何回かこのセリフが登場します。
しかし、マンガの『岸辺露伴』にはこの「心の扉」のセリフは出てきません。
「心の扉」は『ジョジョ』4部で露伴が初めて登場するシーンで発する言葉なのです。原作の荒木先生もヘブンズドアーの能力を初めて目にする読者にを伝えるために「心の扉」という言葉を考えたのだと思います。
「心の扉」は岸辺露伴のルーツである『ジョジョ』に忠実であるとともに、初めて観た人にも配慮したセリフだったんですね。
『ピンクダークの少年』が大好き「だった」泥棒
第1話の最初、露伴の家に泥棒が入るシーンは原作にはありません。
このシーンで、泥棒の一人が露伴の作品『ピンクダークの少年』が大好きだったことが明かされます。しかし、露伴は『ピンクダークの少年』が8部まで続いていて現在も連載中であるため、泥棒が自分の作品をもう読んでいないことを見抜き、たしなめるのです。
一方、原作者・荒木先生の『ジョジョの奇妙な冒険』も同じく現在8部が連載中です。
これは読者に対する痛烈な皮肉だと思います。実際、ぼくも恥ずかしながら第8部の『ジョジョリオン』は読んでいないんですよね。視聴者の中にも耳が痛い思いをした方がいるんじゃないでしょうか。
第2話 くしゃがら
「くしゃがら」という謎の言葉に囚われた人々を描いたホラー。
こちらの話は短編小説集『岸辺露伴は叫ばない』に収録された北國ばらっどさんの短編が原作です。原作マンガではなく小説をドラマ化するあたりにジョジョ読者への挑戦的な態度が感じられますね。ぼくもマンガは読んでいますが小説は読んでなかったので、してやられた気分になりましたね。
森山未來の怪演
『くしゃがら』では漫画家・志士十五を演じた森山未來さんの怪演が話題になりました。
本当に何日も寝ていないような表情や言動は鬼気迫るものがありました。顔から倒れ込んだシーンもリアルでしたね。
岸辺露伴のジョジョ立ち
このエピソードではジョジョ立ちが登場しました。「ジョジョ立ち」とは『ジョジョ』の登場人物がする独特なポーズです。
露伴が正気を失った志士を殴るシーンで、露伴演じる高橋一生さんが頭に腕を掲げる少し不自然なポーズをします。
このポーズは『岸辺露伴』の『六壁坂』というエピソードの扉絵での露伴のポーズです。ファンにしかわからないサービスシーンでしたね。
第3話 D.N.A
逆さに言葉を話す女の子とその母親である女性のエピソード。露伴は女性から娘がほかの子と違うことについて相談されます。『岸辺露伴』はドラマ化するにあたり様々なアレンジが加えられていますが、中でもこの第3話は大胆なアレンジが加えられています。
平井太郎
1話からずっと出演しているのが中村倫也さん演じる謎の人物・平井太郎。3話では平井の謎が明かされます。平井は事故によって記憶を失った写真家として登場しますが、原作では「尾花沢」という名前で登場し、その職業も弁護士。ドラマではかなりアレンジが加えられた人物になっています。
ちなみに、平井太郎という名前は江戸川乱歩の本名からとったのではないかと考えられます。
絵本
ヘブンズドアーという能力は、原作では人の顔がページがめくれるように変化する表現がされているのですが、ドラマでは人が本そのものになるというアレンジがされています。
ドラマでは真央という女の子が絵本になってしまいます。すごく素敵な演出でしたね。クライマックスではこの絵本がまた変化して、さらなる感動がありました。
結論:原作リスペクト+初心者への優しさ+アレンジ
ドラマ版『岸辺露伴』は、原作を読み込まないとわからないネタがたくさんありつつ、初心者が観ても分かりやすいような工夫がたくさんされています。それだけに留まらず、原作をどうアレンジしたらより素敵に見えるかというオリジナリティーもありました。アニメ版の脚本をつとめた小林靖子さん、そして原作ファンである主演の高橋一生さん、演出の渡辺一貴さんをはじめとしたチームの『ジョジョ』愛にあふれた作品でしたね。
ドラマ『岸辺露伴』は1月4日から再放送が始まるようです。見逃した方はぜひご覧ください。
ぼくは小説版の『岸辺露伴』を読んでもっと勉強します。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
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