1巻完結,短編集

漫画短編集「睡沌気候」が絵本のようでおもしろい理由6選!

児童文学の挿絵みたいな不思議なマンガがよみたい

という人には、コマツシンヤさんの「睡沌気候」がおすすめです。

「睡沌気候」はコマツシンヤさんの短編集で、2011年に青林工藝舎から発売されました。

ごく短い短編も含め、全19編、192ページです。

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コマツシンヤ「睡沌気候」が絵本のようでおもしろい理由6選!

①影響を受けた「マンガ家」

②「ふつうのマンガ」の描き方ではない

③セリフがない

④インクの色

⑤オチがない

⑥少年心をくすぐる

コマツシンヤさん経歴

コマツシンヤさんは1982年高知県生まれのマンガ家、イラストレーター、絵本作家です。

コマツさんは現在、高知県吾川郡いの町に暮らしています。

コマツさんは子どもの頃からマンガを描いて地元の高知新聞に投稿をしていたそうです。

2004年に「アックス」(青林工藝舎)に表題作「睡沌気候」が掲載され、デビューしています。

本作「睡沌気候」がコマツさんにとって書籍化された初めての作品になります。

①影響を受けた「マンガ家」

コマツシンヤさんはインタビューで、影響受けたマンガ家さんについて

たむらしげるさんと佐々木マキさんをあげています。

たむらしげるさんは雑誌「テレビステーション」の表紙のイラストで有名ですよね。

お二人とも今はマンガ家というより絵本作家やイラストレーターとしてのほうが有名です。

しかし、もともとは二人とも雑誌「ガロ」のマンガ家でした。

言われてみると、コマツさんの絵柄は二人の作品によく似ています。

コマツさんはあえて「マンガ家」として二人の道を受けついだといえます。

②「ふつうのマンガ」の描き方ではない

コマツさんのマンガはいわゆる普通のマンガの描き方のルールにとらわれない描き方をしています。

マンガは描き方がある程度決まっています。

暗い部分はカケアミで表現するとか、

コマ割りはページの右上からはじまって左下に目線を誘導するとか。

大体、大手出版社の少年マンガ等は同じようなルールで書かれています。

しかし、コマツさんの絵は影のつけ方も独特で、コマ割りも普通のマンガのルールに従っていないところがあります。

「マンガというものはこういうものだ」という固定観念があったら描けないマンガですね。

コマツさんがブレずに自分のスタイルを続けてきたことがデビューやそれ以降の仕事つながったのでしょう。

自由なルールで描かれたマンガだからこそ、いままでのマンガでは味わったことのない感覚が味わえますよ。

デビュー作が「ガロ」の後継誌である「アックス」だったことも感慨深いです。

③セリフがない

「睡沌気候」にはセリフのない作品がいくつかあります。

太陽の休暇

「太陽の休暇」はジョルジュ・デ・キリコの「通りの神秘と憂愁」という絵にインスピレーションを受けた作品です。

(少女が輪っかを棒で回して走っているあの絵です。)

「通りの神秘と憂鬱」自体は不安になるような絵ですが、

コマツさんの「太陽の休暇」という作品では不安な要素を感じつつ、

少しだけほっとするような終わり方になっていますよ。

シエスタ

「シエスタ」という作品はセリフがないだけでなく、

コマの大きさが全部同じで構図も全部同じという作品です。

1ページに6つの同じ大きさのコマ、計4ページです。

星新一さんのショートショートのようです。

④インクの色

インクの色は普通黒ですよね。

またはフルカラーか赤と黒の2色刷りです。

冒頭の「でんじんさま」「シエスタ」という作品は青いインクで印刷されています。

なんとも涼やかで軽い印象です。

たぶんコマツさんが描いたときには黒いインクだったんじゃないかと思います。

出版社の青林工藝舎さんとの打ち合わせの中でインクの色を変えてみたんでしょうね。

冒頭からおしゃれで新鮮な感じが漂いますよ。

⑤オチがない

「睡沌気候」の作品は明確なオチがない作品がいくつかあります。

その中の一つを紹介します。

泥鰻

少年が友達と嵐があった翌日の川を見に行く話です。

嵐の起こったあとの川には「泥鰻」というまるで竜のような大きいウナギがいます。

友達は川の泥鰻に心がとらわれて返事をしても答えてくれません。

この話にはこれといったオチがありません。

しかし、オチがないことによってシーンの情景がダイレクトに伝わってくる気がします。

水しぶきを上げながらぬらぬらとうごめく泥鰻と

友達が笑みを浮かべながらじっと川を見ている様子が強く印象として残ります。

とても不思議な物語ですよ。

⑥少年心をくすぐる

「睡沌気候」には電球やキノコ、化石など

子どもが好きそうなモチーフがたくさん出てきます。

モチーフだけでなくストーリーの中でも子ども心をくすぐるようなシーンが出てくる作品があります。

「記号の虹」

記号で描かれた虹を少年が解明しようとする話です。

ある日、変わった虹が出ていました。

少年が目を凝らすと虹に細かな記号が書いてあることに気づきます。

その虹は今まで見たことのない虹でした。

少年は虹に書かれた記号を書き写すためになんとか試行錯誤します。

そもそもなんで少年が虹の記号を書き起こそうと思ったのかというと、

「書き起こせば世界の謎が解明できるから」

という理由でした。

なんでそう確信したのかはわからないのですが、根拠はないみたいです。

子どもの頃って根拠のないことを信じたりしてしまいますよね。

私も子どもの頃、なぜか直感で根拠のないことを確信したことがあったような気がします。

わすれてしまった気持ちを思い起こさせてくれるようなストーリーです。

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まとめ

コマツシンヤさんの短編集「睡沌気候」は普通のマンガではありえないようないろんな試みをしています。

しかし、コマがあってセリフがある以上、やっぱり「マンガ」なんだと思います。

「睡沌気候」は2004年から2008年までの作品を集めています。

コマツさんのすごいところは最初からブレずにこの作風だったところです。

そして、その作風はたむらしげるさんや佐々木マキさんという源流がありました。

先駆者を受け継ぐことによってマンガの可能性を広げた「睡沌気候」

漫画に関わらずいろんな本を読んでみたいという人にもおすすめですね。

ぜひ読んでみてください。

ちなみに、電子書籍版はありませんので、ネット通販か書店でお買い求めください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。

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