1巻完結,短編集

大友克洋「童夢」が映画みたいにおもしろい理由7選!

超能力バトルを描いた極上SFマンガが読みたい

という方は「童夢」がおすすめです。

「童夢」は1983年に発売された大友克洋さんのマンガです。1巻完結です。

日本漫画家協会賞優秀賞、日本SF大賞、星雲賞コミック部門を受賞しています。

日本SF大賞をとったマンガ作品は「童夢」が初めてです。

久しぶりに読んでみましたが、

あまりの表現力に興奮して思わず声が出ました。

大友克洋さんの「AKIRA」についてはこちらの記事でまとめています。

いまさら聞けない!AKIRAの予言とは?オリンピック・コロナ
AKIRAはオリンピックとコロナを予言していた!?「そもそもAKIRAってなに?」 という人にもわかるようにAKIRAの概要とウワサについて検証してみました!

 

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大友克洋「童夢」が映画みたいにおもしろい理由7選

①音の表現

②構図

③シーンの省略

④緻密な背景

⑤球状のエネルギー

⑥主役がいない

⑦ミステリー

あらすじ

「堤団地」では不審な死亡事件が3年にわたり20件以上重なっていました。

しかし、山川部長ひきいる警察は何の手掛かりも掴めずにいました。

ある日の夜、山川部長は調査のために団地を訪れますが、自分に語りかける不思議な声を聞きます。

山川を待ち受けていたのは意外な人物。

彼は超能力で人を殺していたのです。

そして現れる新たな超能力者

超能力者同士の迫力のバトルが始まります。

①音の表現

「童夢」は音の表現が控えめなので音がリアルに感じます。

「ドン!」とか「ババッ!」とかいう書き文字が小さめないんですよね。

吹き出しつきで「どさっ」という音が描かれているところが印象的です。

屋上から人が落ちた最初のシーンの音を表現しています。

上空数十メートルから団地を見下ろす構図で

吹き出しが小さく「どさっ」と描かれているだけです。

落ちた人の様子は描いていません。

上空数十メートルから音を撮ったら本当にそんなふうに聞こえてきそうな表現です。

他のシーンでも「そこにもしカメラがあったらそう聞こえそう」という音を表現しています。

リアル感があって映画的な表現です。

②構図

「童夢」は「これしかない」という構図で描かれています。

崩れ行く建物の中でどこにカメラを置いて撮ったら迫力があるか、

顔をどこから撮ったらいい表情が見られるか、

「ここしかない」というところから描いています。

構図によってはCGや特殊なカメラを使わないと撮れないカットがあります。

1980年ごろの撮影技術ではまず不可能ですね。

当時は「マンガやアニメでないと描けない作品」だったと思います。

今ならCGを使って撮れそうですね。

③シーンの省略

「童夢」ではシーンがところどころ省かれています。

最初のシーンで飛び降りた上野さん。

次に犠牲になった警官。

そして山川部長。

3人が死ぬ瞬間は全く描かれていません。

読者に「きっとこういうことがあって死んだんだろう」と思わせる余韻を作っています。

最小限のカットだけで物語を表現するのはやはり映画的です。

④緻密な背景

「童夢」は背景の描きこみが非常に緻密です。

堤団地という何棟も並んだマンモス団地の一つ一つ、

ベランダに干された洗濯物まで描きこんでいます。

そして、超能力や爆発によって崩れる建物の破片の一つ一つまで描き切っています。

本当にリアルです。

⑤球状のエネルギー

「童夢」は超能力によってできたエネルギーを「球体」として表現した最初のマンガです。

いまでは当たり前の表現ですよね。

「童夢」のエネルギー体はサイコキネシスなので

「ドラゴンボール」のかめはめ波のように見えるものではないです。

超能力のパワーが壁に当たることによって、まるで丸くて大きな鉄球がぶつかったように壁が丸く半球状にへこみます。

その表現は「童夢」がはじめてだといわれています。

「童夢」がなければ「ドラゴンボール」やそのほかの作品はなかったといっても過言ではありません。

壁がへこむ様子、ひび割れの一つ一つが緻密に描かれています。

最初にして最高の描き方をしています。

⑥主役がいない

「童夢」では最初から最後までずっと登場しているようなキャラクターがいません。

登場人物のモノローグもほとんどありません。

主役を強いて挙げるなら「団地」自体ですかね。

宮部みゆきの「理由」という小説に似ています。

ただ事実だけを追っているような描き方は、SF作品なのにリアル感があります。

「童夢」はSF作品でありながら群像劇という複合的なおもしろさがあります。

⑦ミステリー

「童夢」は刑事が不審死の謎を追っていくミステリーの側面もあります。

犯人が起こす数々の事件を警察が追う裏で、

実は超能力バトルが行われているという話の構造になっています。

様々な要素が重なり合っているにも関わらず、

お互いが邪魔をせず、ミステリー部分はミステリー単体として楽しめます。

購入について

「童夢」は「アクションデラックス」(双葉社)で連載されていたものに大幅な加筆をして単行本化されましたが、

現在は出回っていないので、運よく書店に在庫があるか、中古でないと手に入れることができません。

価格もプレミアがついています。

「AKIRA」もそうです。ちょっと残念ですよね。

大友克洋大全集なんかを出してほしいです。

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まとめ

ここまでの「童夢」の魅力を映画に例えると、

「音の表現」は録音

「シーンの省略」は演出

「構図」は撮影

「球状のエネルギー」はVFX

「主役がいない」、「ミステリー」は脚本に当てはまります。

読めば読むほど今映画化してほしいと思う漫画ですね。

柄本明さんあたりに出演してほしいです。

色んな人に読んでほしい漫画ですが、今は手に入りにくくなってしまったことが残念です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。

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