笹生那実さんのマンガ『薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記― 』が『このマンガがすごい!2021』オンナ編3位に選ばれました!おめでとうございます!
こんにちは、きたはちです。
5巻以内完結や短編集など短いマンガをこよなく愛しています。
『薔薇はシュラバで生まれる』は70年代に少女マンガのアシスタントとして活動した笹生さん自身の経験をつづったエッセイ漫画。70年代の少女マンガがわからなくてもある程度楽しめますし、ファンならさらに楽しめると思います。一昔前の少女マンガ風に描きつつ、現代でも読みやすい絵柄が逆に新鮮です。少女マンガに全然興味がないなら無理におすすめはしないですが、「アシスタントや少女マンガ家の生活に少しでも触れてみたい」と思うなら満足できる内容ですよ。恥ずかしながらぼくは70年代の少女マンガをあまり読んでいませんが、エッセイ漫画として楽しめました。
内容や魅力について紹介しますね。
『薔薇はシュラバで生まれる』ってどんなマンガ?
美内すずえ先生、くらもちふさこ先生、樹村みのり先生、三原順先生、山岸凉子先生etc……、
数々の名作を生み続けるレジェンドたちーー、の元でかつてアシスタントをしていた著者の、とんでもなく貴重な体験を描いたコミックエッセイ。
美内先生との初対面と、想像を絶するシュラバ。才能ある若き漫画家たちの知られざる努力とこだわり。
あの作品のあのエピソードの誕生秘話など、少女漫画好きなら身悶えする様なお話がたくさん!
若き先生方と若きアシスタントたちの、血と汗と涙と喜びの青春時代を綴ります。
薔薇はシュラバで生まれる Amazon商品詳細ページより
笹生さんは70年代から漫画のアシスタントを始め、その後、自身も漫画家デビューしています。
名だたる少女マンガ界の巨匠に対する尊敬と、笹生さん自身の優しさが伝わってくるようなエッセイ漫画ですね。
魅力①70年代アシスタントの裏側が見える!
『薔薇はシュラバで生まれる』はアシスタントならではの「あるあるネタ」がたくさん散りばめられています!
仕事中は何をやっていたのか、どんな話をしていたかなど、40年以上前のこととは思えないくらい細かいところがわかりますね。
それもそのはずで、笹生さん自身が記憶だけでなく、漫画家さんやアシスタントさんに確認しながらストーリーを作っているのです。このマンガのすごいところはその取材力にあると思うんですよね。
魅力②絵柄が70年代風なのに読みやすいのはなぜか考えてみた
このマンガは70年代少女マンガ風なのに絵柄が洗練されていて読みやすいんですよね。
「なぜかわからないけど読みやすい」だと答えにならないので自分なりに考えてみました。
まず注目すべきは、このマンガの登場人物は少女マンガにしては等身が低く描かれているところ。このマンガは少女マンガの現場を描いている前にエッセイ漫画なんですよね。エッセイ漫画は共感しやすいことが大事です。登場人物の等身を低くすることによって親しみやすさが生まれていると思うんですよね。
また、このマンガは全てが70年代風なわけじゃなありません。登場人物の顔がところどころ70年代風なだけです。
普通のシーンやギャグシーンの表現は80年代以降の高橋留美子さんや吾妻ひでおさんを彷彿とさせます。
作者の笹生さんは漫画家を引退してから20年間、同人活動をしていたそうです。その間に絵も時代に合わせてブラッシュアップしていったと考えられます。
修羅場感はあんまりない…
正直、修羅場感はあんまりないですね。「70年代当時のアシスタントが置かれていたブラックな職場環境」のような暴露本的なものを想像しているなら期待はずれになると思います。
当時、アシスタントとしてついていた漫画家さんたちに直接了承を得ながら作っていったそうなので、当然、変なことは描けないですよね。ただ、辛い思いや人生において大きい決断もしてきたと思うのでその辺を見てみたいという興味はありますが。
魅力③アシスタントだからわかる作品の裏話がわかる
このマンガの一番の魅力は、アシスタントから見た作品の裏話が分かるところです。
山岸涼子先生が『天人唐草』という作品を描いたときにどんな気持ちだったか、『天人唐草』が山岸先生にとってどんな作品なのかなど、作品に実際に関わっていたからでないと分からないエピソードですよね。ロマンがあります。
漫画作品に対して、作者の次に近い位置にいるアシスタント。その仕事の醍醐味のようなものを感じます。今まさにアシスタントの仕事をしている人にも響きそうな内容ですね。
まとめ
『薔薇はシュラバで生まれる』はただ70年代当時のアシスタントの裏側がみられるだけでなく、ロマンを感じるようなエッセイ漫画になっています。ぜひ読んでみてくださいね。
『薔薇はシュラバで生まれる』はイースト・プレスから発売されています。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
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