どうもこんにちはきたはちです。
5巻以内完結や短編集など短いマンガをこよなく愛しています。
このブログでは主に短くてサクッと読める新刊マンガの感想をお伝えしています。どうぞよろしくお願いします。
『藤本タツキ短編集22-26』が11月4日に発売されました!おめでとうございます!
この記事では、『藤本タツキ短編集22-26』に収録されている作品を徹底解説していきます!
『藤本タツキ短編集22-26』ってどんなマンガ?
『チェンソーマン』藤本タツキの初期短編集第2弾!! 海中のピアノが繋ぐ少年と人魚の恋『人魚ラプソディ』、芽生えたのは女心か恋心か!? 『目が覚めたら女の子になっていた病』、残酷な運命を背負った妹と兄の物語『予言のナユタ』、絵に懸ける姉妹の愛憎と才能が交錯する『妹の姉』――のちの大ヒット作への萌芽が散りばめられた奇跡の作品集!!
『藤本タツキ短編集22-26』 Amazon詳細ページより
第1弾の『藤本タツキ短編集17-21』は先月の10月に発売されています。今回は『22-26』なので、この数字は藤本さん自身の年齢であることがわかります。
大学に入学した時がちょうど東日本大震災の頃ですので、藤本タツキさんは2021年現在でおそらく29歳。若い!
今回の短編集は『17-21』より画力が格段に上がっています。構成力もかなり上がって完成度の高い作品ばかりでした。とはいっても、収録されているのは4作品のみ。「あれ?短いじゃん」と思うかもしれませんが、1作品につき約50ページなのでかなり読みごたえがあります。ただ、読みごたえがある割には数十分で読み終わってしまうくらい集中させられる一冊です。
『人魚ラプソディ』
ある漁師町。
子どもたちは海に近づくなと言われていた。それは、人魚が出るから。人魚は人をおそって食べるそうだ。
トシヒデの父は漁師をしていた。しかし、トシヒデに母はいない。トシヒデの母は人魚だった。
トシヒデは海の底にあるピアノに母とのつながりを感じていた。
あとがきに、「藤本タツキは普通の話がかけない」と言われてムキになってかいた作品とあります。
たしかに普通の作品といえば普通の作品ですが、かつてのジャンプっぽいキャッチーな作品ともいえます。
まず、「セーラー服の人魚」ってだけでかわいいですよね。海の中の浮遊感、透明感もすごくつたわってきます。
この作品を読んで、ぼくは藍本松さんの短編集に収録されている『ウルトラマリン』という作品を思い出しました。作品のモチーフや設定がにかよっているからです。ただ、ぼくはこちらの『人魚ラプソディ』のほうが好きですね。世界観が現実世界に近く、闇が深いからです。少年漫画としては藍本松さんのほうが正解なのかもしれません。
海をモチーフとした作品はたくさんあります。古くは『人魚姫』。近年だと、『崖の上のポニョ』、『夜明け告げるルーのうた』、『海獣の子供』。それらと比べても、『人魚ラプソディ』は闇が深く、藤本さんらしい作品だと思います。ポイントは「人魚は人を食べる」というところにあります。
さらに注目すべきは中盤に大きなターニングポイントを持ってきているところです。「人魚と少年の交流」という心あたたまる話から、ガラッとかわる大きな事件が起こります。
普通は終盤にクライマックスをもっていきがちですが、その定石を無視した構成。藤本さんの凄みはそこにあると感じました。藤本さんが東日本大震災を経験したことも少なからず作品に影響しているのかもしれません。
『目が覚めたら女の子になっていた病』
トシヒデは目が覚めたら女の子になっていた。それは、「目が覚めたら女の子になっていた病」だった。しかも、治らない!
もともと泣き虫のトシヒデは、女の子になったことで学校でいじめられ、気持ち悪がられた。
トシヒデの彼女・リエはかいがいしくトシヒデをはげましていたが…。
「また『トシヒデ』かよw主人公の名前適当だなw」
と思ったのはぼくだけじゃないはず。
女体化した男の子が不良に体をねらわれるというエロマンガ的な展開。しかし、それだけで終わらず、性欲というものにちゃんと向き合ってえがかれています。
体が女になると心も女にかわるのか?男らしさ、女らしさとは何か?そういったことが突き詰められていて、意外とかんがえさせるものがあります。
『予言のナユタ』
「母体を貫き ツノを持つ魔法使いが産まれる
その者 人の心を持たず 残酷で 理解不能な言葉を喋り
やがて世界を滅ぼすだろう」
世界中の魔法使いがそう予言した。母が命を落としてまで産んだツノのある子供・ナユタ。それがケンジの妹だった。
ナユタは意味不明の言葉をしゃべる。「圧死心臓!煉獄虐殺拷問!」
ナユタは生き物を殺す。
世界中の人間がナユタを殺せと叫ぶ。それでも、兄は妹を守る。
この作品は『チェンソーマン』でセルフオマージュされているので、以前から知っていました。
ナユタがかわいいですね。意思疎通がままならないと、なんでこんなにかわいいんでしょうね?
ナユタは世界中から嫌われていて、世界の脅威であることもおそらく間違いない。ナユタがいなくなった方が世界が平和になる。そんな忌むべき存在であるにもかかわらず、兄だけはナユタを信じ、守りつづけます。
おどろおどろしい世界観ですが、えがいているのは家族愛。手法は凝っているけど、シンプルなテーマというところがいいですね。
この作品は、「個性的なキャラクターがかけない」と言われてかいたんだそうです。そして生まれたのがツノがあって意味不明な言葉をしゃべるナユタ。なんとも暴力的で藤本さんらしいです。
『姉の妹』
仁賀美術高校には伝統があった。それは、学校主催のコンクールで金賞をとった絵が、玄関前に一年間も飾られること。
今年も一枚の絵が飾られた。それは在校生の江原光子のヌードを描いた作品。それは、光子の妹、杏子の作品だった。
この作品は、『ルックバック』のもとになった作品です。
最初に女の子のヌードがドーンと登場するインパクト。それがなんともなまめかしい。
自分のヌードが自分の通っている学校に飾られているとどうなるのか?
そこからはギャグマンガのような展開になります。
そしてふたたびのヌード。ギャグでエッチでジャンプらしいです。
でも、そこで終わらないのが藤本タツキ。
天才の妹を超えようと努力する姉。幾日も幾日も、何枚も何枚も絵をかきます。ギャグでエッチで青春でもある。それが音楽のように転調しながら進んでいきます。
まとめ
というわけで今回は以上です。最後までよんでくださってありがとうございました。
藤本タツキさんのマンガは残酷な表現が目立ちますが、学園モノや青春モノをえがける一面もあることがこの短編集を読むとわかります。そして、中盤でガラリと違う展開をしていくのも藤本さんの技ですね。
また、短い時間で読み終わってしまう割には映画を見た後のような心地よい疲労感におそわれます。それは、高い画力とドラマチックな展開にその秘密があるようです。
『藤本タツキ短編集22-26』は藤本タツキという漫画家が完成する様子を体感できる一冊となっています。藤本さん自身のあとがきもみのがせません。ぜひ読んでみてくださいね。
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