1巻完結,短編集

「失踪日記」でマンガ家人生の生きざまがわかる理由6選

こんにちは。きはたちです。

5巻以内の漫画や短編漫画を中心に読んでいます。

もう人生やりなおせないな

と思っている人は「失踪日記」を読んでみてください。

ホームレス体験アルコール依存症で入院した経験を描いた作品です。

そんなの読んだら落ち込むわ!

と思いますよね?

作者・吾妻ひでおさんはひどく辛い経験をしながらも「失踪日記」で様々な賞を受賞しています。

きっと「失踪日記」は誰だってやりなおせるってことを教えてくれますよ。

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「失踪日記」でマンガ家人生の生きざまがわかる理由6選

1.輝かしい受賞歴

2.あっけらかんと描いた壮絶な体験

3.ポップな絵柄

4.現代社会にひそむホラー

5.天ぷら油

6.客観性と記憶力

「失踪日記」は2005年に発売された吾妻ひでおさんの作品です。

自身の2度の失踪体験とアルコール依存症のため入院していた時期を描いたノンフィクション作品です。

2013年には続編「失踪日記2アル中病棟」が発売されました。

吾妻さんは2019年10月に永眠されています。

「失踪日記」の構成

・夜を歩く(全9話(イントロダクション含む))

・街を歩く(全14話)

・アル中病棟(全8話)

吾妻ひでおさん経歴

吾妻ひでおさんは1969年マンガ家としてデビューしました。

「ふたりと5人」「やけくそ天使」などのヒット作を飛ばし、

1980年代には、いしかわじゅんさん、大友克洋さんとならび、SFニューウェーブ漫画家としてブームを起こしました。

「失踪日記」はマンガ家としての人気が低迷した後の2度の失踪、入院の経験を描いています。

3部構成の内容として、

「夜を歩く」は1989年の1度目の失踪、

「街を歩く」はマンガの仕事に復帰した後、1992年の2度目の失踪、

「アル中病棟」は1998年にアルコール依存症で入院したことを描いています。

1.輝かしい受賞歴

吾妻さん自身は「消えた漫画家」とまで言われたにもかかわらず、「失踪日記」は

第34回日本漫画家協会賞大賞、

第9回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、

第10回手塚治虫文化賞マンガ大賞

など数々の賞を受賞しています。

これら3つの賞を同時に受賞したのは「失踪日記」だけです。

2.あっけらかんと描いた壮絶な体験

「失踪日記」は自殺未遂やホームレスなどつらい体験を描いている割に、

マンガの中の吾妻さんには深刻な感じがあまり感じられないです。

あなたなら、ごみからサンドイッチとかを大量に見つけて飛び上がるほどよろこべますか?

たぶん無理でしょう。

吾妻さん本人もマンガで描かれているほどはよろこんでいないと思います。

「失踪日記」はあくまで「人様に見せられるマンガ作品としてまとめられたもの」という感じがします。

実際にはそんなにあっけらかんとしていなかったんじゃないかと思うと、一層つらさを感じます。

3.ポップな絵柄

「失踪日記」は吾妻さん独特のかわいらしいポップな絵柄で描かれています。

野宿をしていた翌朝、町が雪に包まれているシーンが印象的です。

民家やビルに積もった雪がまるでお菓子の家のように描かれています。

雪が積もったシーンについてはあとがきで同じ漫画家のとり・みきさんとの対談の中で語られ、表紙にも使われています。

うつ病のときにみる幻覚も丸っこくてかわいらしく描かれています。

拾ったワインのボトルすらかわいいです。

これだけかわいいと、

「辛い体験をしているのに周りがこんなにかわいく見えるわけがない」

と逆に怖さが募ります。

4.現代社会にひそむホラー

「失踪日記」を読むと、

「絶対にこうはならないようにしよう」

と誰もが思うでしょう。

しかし、一時代を築いたマンガ家すらホームレスになったりやアル中になって入院したりするんですから、

我々小市民だってそうならないとは限りませんよね。

まともな生活もホームレスも紙一重だとわかります。

5.天ぷら油

第1部の「夜を歩く」で注目すべきなのは、1話目で拾った天ぷら油を2話目でも出しているところです。

あたりまえだと思いますよね?

「夜を歩く」の1話目を執筆したあと、吾妻さんは2度目の失踪をしています。

1話目は1992年初出、2話目は2005年に本作のために描き下ろされたものです。

その間、13年!

13年経っていたら枕元にあった天ぷら油なんかどうでもよくなりませんか?

この天ぷら油に物語を続かせることへの吾妻さんのこだわりが感じられます。

ちなみに天ぷら油はそのあとも活躍します。

6.客観性と記憶力

マンガの中では色々な登場人物、エピソードが出てきます。

しかし、実際に執筆したのは失踪や入院からある程度たった2000年代のことです。

これだけ色んなエピソードを覚えて作品にできるのは根っからのマンガ家体質でないと無理でしょう。

出会った人物、自分がしてきた体験、自分自身についてもすべて常に客観的にみているということです。

もしかしてマンガにするためだけにこれだけ辛い体験をわざとしてきたのではないかと疑ってしまうほどです。

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まとめ

「失踪日記」を読めば、ホームレス生活や貧乏生活、アルコール依存症の怖さがわかると思います。

同時に、辛い体験をポップに描ける客観性整理されたストーリーは、吾妻さんの漫画家としてのプライド、天才性を感じます。

そして大事なのは人生いつからでもやりなおせるということです。

吾妻さんが漫画家として2度目の花を咲かせた「失踪日記」、ぜひ読んでみてください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。

吾妻ひでおさんのご冥福をお祈りいたします。

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