アートで前衛的なマンガが読みたい!
という人には横山裕一さんの「世界地図の間」がおすすめですよ。
武蔵野美術大学出身の横山裕一さんは現代美術でつちかったセンスを漫画に落とし込んだ作風です。
また、「世界地図の間」は「ネオ劇画」ともよばれています。
「宝石の国」の漫画家・市川春子さんも虜にする横山裕一さんのマンガ。
この記事では、「世界地図の間」の魅力について紹介していきますね。
ネオ劇画とは?芸術的なのに笑える漫画
ネオ劇画とは何か?これがそれである。
「世界地図の間」帯コピーより
「世界地図の間」のあらすじや特徴、劇画との違いなどを紹介してネオ劇画と呼ばれる理由を解説します。
こんな内容になっています。
・ストーリーと概要
・セリフが簡潔すぎて笑えてくる
・やけにファッショナブル
・やけに緻密
・時間が変わらない
・横山裕一さんについて
・劇画からネオ劇画へ
ストーリーと概要
「世界地図の間」は2013年にイースト・プレスから発行されました。
1巻完結、186ページです。
3人の男がある建物を目指すというだけのストーリーです。
3人の男たちは街に来るのが初めてらしく、色々なものに疑問をもちます。
低空飛行の旅客機、同じ服を着た男たち、対岸に渡る船。
3人が目的地である建物の中庭へ行ったところで話は突然終わります。
セリフが簡潔すぎて笑えてくる
![](https://kitamanga.com/wp-content/uploads/2020/07/3254101_s-min.jpg)
「世界地図の間」はセリフが簡潔すぎておもしろいんですよね。
どこなんだ
あそこだ
あそことはどこだ
簡潔なんですが、「別に聞かなくていいだろ」ってことを聞いてたりするので、そこがさらにおもしろいです。
芸術的でありながら笑えちゃうマンガですね。
やけにファッショナブル
![](https://kitamanga.com/wp-content/uploads/2020/07/2458135_s-min.jpg)
「世界地図の間」に出てくる男たちは奇妙な見た目をしてます。
目はどこを見ているのかわからないし、顔は彫刻のようで表情はまったく変わりません。
男たちの顔はまるでウルトラマンやそれに登場する怪獣のような感じです。
服装は派手な柄のシャツやスラックスなど70年代風ですね。
要所要所でポーズをとっていてやっぱり笑えちゃいますね。
やけに緻密
![](https://kitamanga.com/wp-content/uploads/2020/05/DSC_1745-min.jpg)
横山裕一の絵は背景が緻密なんですよね。
デフォルメはされているんですが、一点透視の奥行きのある背景は妙な迫力があります。
街の全景を見渡すシーンがすごいんですよね。
何コマにもわたって街の全景が描かれているのですが、ビルがたくさん描かれているにも関わらず、背景がつながってるんですよ。
まるでビデオカメラで視線を追っているような描き方です。
「こんなとこ誰も見ないだろ」っていうところまで手を抜いてないのがすごいですね。
時間が変わらない
![](https://kitamanga.com/wp-content/uploads/2020/07/3496492_s-min.jpg)
物語ってシーンが変わりますよね。
横山裕一さんの漫画はシーンが変わりません。
物語はふつう、何時間後とか何年前とかになったり、別の登場人物のシーンになったりして、複数のシーンが組み合わさってできています。
「世界地図の間」の場合は、3人の男たちの行動を時間が途切れることなく追ってるんですよね。
まるでドキュメンタリーやホームビデオを見ているような変なリアル感があります。
人物たちや背景は全然リアルに描かれてないんですけどね。
時間がリアルなんですよね。
横山裕一さんについて
横山裕一さんは武蔵野美術大学卒業後、NHK学園の通信教育で水彩画の添削のアルバイトをしていました。
ベニヤ板にペンキを使って描画する作風でしたが、コンクールには通らなかったようです。
イラストのコンクールを受けるように友達にすすめられましたが、現代美術を続けたい気持ちからあまり乗り気ではありませんでした。
しかし、応募すると一発合格。
イラストの営業の一環で出版社に漫画を持ち込んだことから漫画デビューが決まりました。
横山裕一さんは自身のマンガを「ネオ劇画」と呼んでいます。
「世界地図の間」も他のマンガにはないような雰囲気が前衛的で芸術作品のようなマンガですね。
劇画からネオ劇画へ
![](https://kitamanga.com/wp-content/uploads/2020/07/205722_s-min.jpg)
劇画は青年向け、大人向けのマンガとして1950年代後半に起こったマンガのジャンルです。
さいとうたかおさんの「ゴルゴ13」が代表的ですね。
劇画はハリウッド映画やハードボイルド小説などに大きく影響を受けています。
「世界地図の間」もある意味ダンディーな男たちしか出てこないし、謎な部分も多いので、ハードボイルド小説のようですね。
劇画との違いは、抽象的なストーリーと無機質なカッコよさです。
機械っぽい男たち、機械っぽい街並みはある意味男くさく重苦しい劇画的な特徴を持っているともいえるし、モダンで洗練された印象も感じさせますね。
まとめ
「世界地図の間」は抽象的なストーリーとデザイン的に洗練された男たちが登場するという意味で「ネオ劇画」と呼ぶにふさわしい漫画です。
シュールなストーリーと言い切りのセリフも相まってカッコよすぎて笑えてきますよ。
「世界地図の間」で今までにないマンガ体験をしてみてくださいね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
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