「ぱいどん」は講談社・モーニングで掲載されたマンガです。
前後編合わせての43ページの読切作品です。
「AI手塚治虫が描いた新作マンガ」として話題になりましたよね。
この記事では「ぱいどん」の気になる中身に加え、2020年7月29日に発売した「ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界」の内容、そしてAI手塚治虫の未来などについて考察していきます!
「ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界」概要
「ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界」はAI手塚治虫が描いた「ぱいどん」本編に加え、「ぱいどん」の制作工程や手塚治虫本人がかつてAIを描いた短編、「サスピション―はえたたたき」などが収録されています。
講談社から発売されていて、全115ページです。
「ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界」の構成
・「ぱいどん」(前編)
・プロジェクトの背景と成果
・GAN(敵対的生成ネットワーク)について
・ストーリーとキャラクターの制作工程
・「ぱいどん」(後編)
・AIが描かれた手塚作品
・「サスピション―はえたたき」
「ぱいどん」あらすじ
2030年、東京。
顔認証システムが広まり、個人情報が管理された近未来。
クリーンエネルギーの第一人者・及川定倍が失踪した。
定倍の娘・アンとイスミに定倍の行方をさがすよう依頼されたぱいどんは共に研究所へと向かう。
研究所でぱいどんが見つけたのは大量のネズミの死骸であった。
主人公・ぱいどん
記憶喪失の青年。
役者であり、自分の顔や声を自由に変えることができる。
機械の義眼をつけ、様々なものを分析できる。
機械工学の知識を持っていて、プログラムのかきかえやロボットをなおすこともできる。
普段は浮浪者のような生活をしている。
世間はAI手塚治虫の可能性を見誤っている!?
「ぱいどん」に関しては否定的な意見もありますが「これは手塚作品ではない」という批判は的外れかなと思います。
理由は二つあります。
手塚作品すべてからデータをとっている!
AI手塚治虫の大きな役割は「ネタだし」!
手塚作品すべてからデータをとっている!
確かに「ぱいどん」は手塚治虫の新作ではありませんね。
それはAI手塚治虫が全ての手塚作品からデータをとっているからです。
手塚治虫の新作であれば、晩年の手塚治虫の絵柄や考え方を踏まえた作品を期待するところですが、手塚治虫の全てのマンガからデータをとったAIはいわば、「生まれ変わった新人の手塚治虫」といえるでしょうね。
しかし、本書を読むと手塚治虫の新作をつくることがプロジェクトのゴールじゃないことがわかりますよ。
手塚治虫の作品そのものを期待すること自体が的外れです。
「手塚治虫の新作」というワードが強いのはわかりますけどね。
期待AI手塚治虫の大きな役割は「ネタだし」!
このプロジェクトでAIがやっているのって主にキャラデザインと話の方向性のネタだしなんですよね。
手塚治虫作品のデータを蓄えたAIは、手塚治虫の思考そのものはシミュレーションできなくても、手塚治虫のようなアイディアを出すことはできます。
「ぱいどん」はあらゆる人の手が加わって作品の形をなしましたが、ひょっとして人の手が加わっていないところに手塚先生が潜んでいるのかもしれません。
隠された手塚治虫の意思をさがしながら読むと、「ぱいどん」もまた違った楽しみ方ができますよ?
AI手塚治虫に挑む!「ぱいどん」考察
「ぱいどん」のシナリオを作る過程でAI手塚治虫は「古代ギリシャ」「哲学者」というテーマを導き出しました。
「ぱいどん」では随所にギリシャ悲劇などからとったモチーフを取り入れています。
登場人物の名前やセリフに表れているんですがその秘密は本書で語られているので伏せますね。
私は本書で語られていない部分のモチーフを見つけたので紹介しようと思います。
水仙
「ぱいどん」の最初に出てくる水仙ですが、ギリシャ神話で水仙の花は、ナルキッソスが死んだ後に湖のほとりに咲いていた花として知られています。
ナルキッソスはナルシストの語源でもあり、水仙の学名Narcissusのもとにもなっています。
なぜ花は揺れている?
「ぱいどん」では「花が揺れているのは風のせいか、我々がそう見えているからか」を話すシーンが出てきます。
これは、観念論的な哲学者プラトンと現実的なアリストテレスを彷彿とさせます。
「ぱいどん」の続編が描かれるとしたら、仮想現実の話や自意識過剰な人物が登場するかもしれませんね。
「ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界」の魅力
ここからは、本書「ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界」の魅力についてまとめますね!
AI手塚治虫の制作工程のヒミツがわかる!
手塚治虫が考えたAIの未来がわかる!
AI手塚治虫の制作工程のヒミツがわかる!
「ぱいどん」はAIがすべて作ったわけではありません。
「ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界」では、人間とAIがどのように協同して一つのマンガを作ったかのヒミツが分かりますよ。
人の手が加わっているからこそ、これからのマンガ制作の可能性を感じますよ。
手塚治虫が考えたAIの未来がわかる!
「ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界」では手塚治虫さんが過去の作品でロボットやAIをどのように描いてきたかもわかります。
ロボットを描いた一番有名な手塚作品は「鉄腕アトム」ですよね。
手塚治虫さんがAIを当時どのように見てきたかが作品を通して語られています。
「AIが発展してきた現代なら手塚治虫さんはどうAIを描くだろう」と想像してみてくださいね。
ぱいどんは無料で読めちゃう…
結局、この本を買わなくても『ぱいどん』のマンガ自体はキオクシアのホームページで無料で読めちゃうんですよね。それを差し引いてもAIでマンガを読む製作過程がわかるのは楽しいですが、「『ぱいどん』だけ読めればいい」という人には物足りない内容かもしれません。
まとめ
「ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界」を読むと今までマンガが作れなかった人もAIを使ってマンガを作れるような時代がくるかもしれないと思わされます。
小学生で漫画家デビューなんていう子どもも増えるかもしれませんね。
また、「ぱいどん」について考察してみるとこの後の展開が気になってきます。
ギリシャ神話や古代の悲劇をモチーフにしたいろいろなストーリーが読んでみたくなりますね。
手塚治虫を通してAIの未来を予感させる「ぱいどん AIで挑む手塚治虫の世界」。
ぜひ読んでみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
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