市川春子さんの短編集「25時のバカンス」について考察してみました。
市川春子さんの他の作品、「宝石の国」や短編集「虫と歌」に比べても、「25時のバカンス」はちょっと難解というか抽象的ですね。
感想だけでは物足りなくなりそうなので、今回は「25時のバカンス」の収録作品のあらすじと感想をのべつつ、考察もしていきたいと思った次第です。
まだこれから読む人も楽しめるようにネタバレはしませんので興味が出てきたらぜひ読んでみてくださいね。


漫画短編集「25時のバカンス 市川春子作品集Ⅱ」夢占いで考察してみた
こんな内容になっています。
・収録作品・概要
・作品紹介
・比喩的な表現が大人っぽい
・共通するイメージを夢占いで考えてみた
収録作品・概要
「25時のバカンス」は2011年に講談社から発行されました。
市川春子さんにとっては2作目の書籍化作品です。
「25時のバカンス」の収録作品はつぎの通りです。
25時のバカンス(前・後編)
パンドラにて
月の葬式
全241ページで、そのうち表題作の「25時のバカンス」は前・後編で114ページです。
作品紹介①25時のバカンス

研究者の姉・西 乙女とカメラマンの弟・甲太郎。
深海の貝に内臓を食べつくされても普通に生きている姉と、子どものころのけがが原因で片目に障害が残っている弟。
海辺の家を舞台に、久しぶりに会った姉弟のバランスに変化が生じる。
25時のバカンス・感想
夜の海が美しいですね。
乙女と甲太郎の姉弟が美男美女でドキドキします。
女性のはかなく美しいさまを「貝殻」というモチーフに置きかえて表現しています。
静かな「大人の海」のイメージの作品ですね。
作品紹介②パンドラにて

土星の衛星・パンドラにあるハマエト・パンドラ女学院。
卒業した者は別の衛星・エンケラドゥスに行き、研究者になる。
二条ナナは授業に行かず、仲間と気ままに暮らす不良生徒。
兄はエンケラドゥスで「未来の番人」と呼ばれる優秀な科学者だった。
無口な新入生・ロロとの出会いがナナを少しずつ変えていく。
パンドラにて・感想
不良のナナがちょっとずつ変わっていく様子がいいですね。
「不良が実は…」みたいなわかりやすいギャップがエモいです。
後半はかなり抽象的な展開になりますが、
学校や家族などの束縛から解き放たれる希望と不安みたいなものが表現されてるんじゃないでしょうか。
作品紹介③月の葬式

北国を舞台にした、家出した天才高校生と謎の青年の物語です。
青年は月から来たといい、未知の病に侵されていました。
月の葬式・感想
青年と高校生の掛け合いがいいですね。
青年は地元の人からやさしくされていてマダムからの人気もありますが、どこか孤独を抱えています。
そこへやってきた高校生がいい理解者となって、とてもバランスの取れた2人になっています。
月が壊れるシーンの迫力がすごいですよ。
あと、蓮コラ苦手な人は注意です。
比喩的な表現が大人っぽい

市川春子さんの作品は、具体的なメッセージが隠されているというよりは、抽象的で比喩的な作品ですね。
表題作「25時のバカンス」なんかは贖罪の意識が最後にすべてつながっているような。
「パンドラにて」は学校という組織の中にいる間は自由と個性が保たれていて、卒業するとみんな画一的になってしまう矛盾について。
「月の葬式」は兄を超える通過儀礼を描いているような気がします。
「25時のバカンス」に収録されている作品はわかりやすい物語でなく、詩や音楽を楽しむような感じです。
大人向けのマンガかもしれませんね。
共通するイメージを夢占いで考えてみた

「25時のバカンス」に収録されている作品には、兄弟・姉妹や壊れやすいものなどいくつか共通するモチーフが出てきます。
それらモチーフが作品を紐解くメッセージになっているかもしれませんよね。
今回は、夢占いにあてはめて作品を考察してみました。
このサイトを参考にしてみました。

夢占いを参考にすると、
表題作「25時のバカンス」は弟と、貝殻を割れやすいグラスに見立てると何かを失う不安と恋人に頼りたい気持ち。
「パンドラにて」は学校と宇宙というモチーフから日常と現実逃避という相反する思いを、
「月の葬式」は月と肌の様子から裏切りや人間関係のトラブルを暗示しているみたいですね。
「25時のバカンス」は人の深層心理にある不安を見透かしているような気がします。
市川さんの作品が読者をひきつけるのは、現代の人が陥りがちな心の悩みを知らない間に癒してるからじゃないでしょうか。
まとめ
「25時のバカンス」は抽象的で詩や音楽のような物語ですね。
今回はあえて一歩踏み込んで考察してみましたが、どうとらえるかは読んだ人にしかわかりません。
ぜひ読んで、あなただけの「25時のバカンス」を感じてみてくださいね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。きたはちでした。
電子書籍も検索してみてください。
コメント